飼育した鶏をさばき、食す。「命をいただく会」で子どもたちが体験できること
2018.02.22
鶴見どろんこ保育園では、飼育した鶏を食する「命をいただく会」を実施しました。実施に際して園が取り組んできたことや、当日の様子、この会に込められた思いをお伝えします。
みんなで話し合いを重ね、この日のために意識を高めて
飼育した鶏をさばき、食す―。
鶴見どろんこ保育園では、このたび「命をいただく会」を実施しました。参加した子どもたちは3歳~5歳までの約20名。事前にその内容や目的について保護者にも説明と参加に関する確認を行い、その上で参加を希望した子どもたちに、鶏の解体や調理を見学してもらいました。
職員間での話し合いも、何度も重ねました。
残酷過ぎないか? 食べられなくならないか?
様々なケースを想定して話す中で、命の存在を実感させる会への意識を高めてきました。参加する子どもたちと、鶏の体についても勉強しました。
バーチャル世代の子どもたちにこそ知ってほしい
作業は午前9時過ぎに始まりました。鶏をみんなで小屋から出し、ガムテープで目隠しをします。
キャッキャとはしゃぐ子どもたちに江間園長が語りかけました。
「みんなも鶏と同じように目隠ししてみて。恐くない? 鶏も急に暗くなって恐いんじゃないかな」
鶴見どろんこ保育園では、数年前から食育として魚をさばいて食べる行事を行ってきました。職員がさばいて、内臓を見せ、触りたい人は触れ、匂いを嗅ぎ、それから食事としていただきます。
さんま、ぶり、わらさ……魚の命を五感で味わう体験を重ね、今回、はじめて家畜での食育体験を実施しました。
園長は言います。
「バーチャルな世界に生きる今の子どもたちにこそ意味のある体験だと思っています。ゲームなら死んでも生き返る。みんなが可愛がっていた鶏は、しめてしまったら二度と生き返らないことを知ってもらいたい。お肉になって食物になるということも。みんなはそういうものを食べて元気をもらってるんだよ、ということを体験してほしい」
卵って子ども? 食べたら死んじゃう、かわいそう
職員が首を折った鶏を順番に見ていく子どもたち。触れたい子には、実際に触れてもらいました。無理強いはせず、すべての段階で子ども自身に、見たいか、見たくないかを選ばせます。
それから、血抜きの作業が始まりました。
しばらく休憩したあと、火を起こして大きな鍋にお湯を沸かします。
鶴見どろんこ保育園の子どもたちは火を起こすことに慣れています。
「散歩で見つけた木の実を焼くところから始まって、10月には焼き芋大会をしました。牛乳パックを利用してマッチで上手に火を起こせるまでに1カ月も試行錯誤したんですよ」と、江間園長。
「それから散歩のときに薪を拾ってくるようになって、今では外のかまどでご飯を炊いています。上のクラスが火を起こしていると、興味を持った下の子たちが見に来て、いつのまにか技術を伝承しているんです」
沸いた鍋に血抜きした鶏を入れ、羽をむしる作業に入ります。
鶏は解体され、スープの具材としてお鍋に、バーベキューのための網にのせられました。
この過程で、みんなが興味を持ったのはお腹に入っていた変な色の卵。
「この卵、子どもなんだよ」
「子ども食べたらかわいそうじゃん」
そう話す子どもたちに先生が聞きました。
「でもさ、食べないで捨てたらもっとかわいそうじゃない?」
黙って考えていた子が顔を上げました。
「この卵、僕が食べる。食べなきゃかわいそうだから」
「僕も卵食べたい!」「わたしも!」
次々に手が上がります。
生も死も原体験として望ましい形で知ってほしい
印象的な言葉を聞きました。
「肉は冷たいね。生きているときはあったかいのに」
園長は言います。
「みんな、生きていればあったかい、動かなくなって冷たいのが死だと知っているんです。前にも鶏を飼っていて病気で死なせたことがありました。お葬式をしたんですよ。生も死も知識でなく原体験として望ましい形で子どもたちの中に残したい。子どもたちは、実はヤギの出産も体験しているんです」
亡くなる命、生まれ来る命の両方を、園での生活の中で実体験として学んでいる鶴見どろんこ保育園の子どもたち。今回の、飼育した鶏を食べるという貴重な経験によって、食べ物としていただく命が人の命を繋いでくれるのだということを肌で感じたことでしょう。
感謝の気持ちを込めて「いただきます」と手を合わせ、鶏をいただきました
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