防災の意識を高めたいー鶴見どろんこ保育園で起震車による大地震体験

2018.11.08

#保育

鶴見どろんこ保育園

東日本大震災を大きく上回る被害が予想される南海トラフ地震の発生確率が高まっているといわれている昨今。子ども達が日中の長い時間を過ごす保育園では、災害発生時における避難計画書やマニュアルなどを必ず用意しており、どろんこ会グループでも毎月の避難訓練の他に、様々な災害を想定した訓練を職員・園児・保護者とともに行い、不測の事態に備えています。

今回は横浜市消防局の方に鶴見どろんこ保育園へお越しいただき、防災指導車(起震車)での大地震の疑似体験を行っていただきました。その様子をレポートします。

起震車が鶴見どろんこ保育園に来てくれるまでの経緯

本企画が開催されるに至った経緯には鶴見どろんこ保育園 江間園長の並々ならぬ想いがありました。

江間園長
鶴見どろんこ保育園 江間園長

「3.11、東日本大震災が発生したとき、私は別法人にいました。突然の大きな揺れの中、2階から1階に子ども達の様子を見に行きたくて階段の手すりに必死につかまりながらも移動しようとしましたが、それでも動けないような揺れで…。その時の園は港区にあったので幸い停電などの被害はなかったのですが、この鶴見どろんこ保育園ではその時と環境も状況も違いますし、ここにいる子ども達は皆あの地震後に生まれています。職員も含め、今一度巨大地震に対する備えの意識を持ちたいとずっと考えていたのです。」

東日本大震災を当時の勤務先の保育園で経験したことから、なんとか保育園でのリアルな防災教育・地震疑似体験ができないか考えていたという江間園長。園が義務付けられている提出書類を消防署に持参する度に「起震車での体験をさせていただけないか」と何度もお願いすること数ヶ月。普段はイベントの予定が詰まり、たった一つの園だけのために手配していただくことは難しいそうですが、起震車が午前中の数時間だけ空く日があることが分かり、「午後のイベントに行く途中であれば」と特別に体験を実施していただけることになりました。雨天の場合は中止。当日までは天気予報とにらめっこな日々が続きました。

防災指導車(起震車)とは?

横浜市の起震車

防災指導車は、別名「起震車」と呼ばれるもので、地域や事業所などの防災指導で地震を体験することができる車両です。関東大震災や阪神淡路大震災などの地震の揺れを体験することができます。(横浜市消防局HPより)

一見普通のトラックのように見えますが、荷台部分が改造され、振動装置が設置されています。各地の消防署や自治体が所有しており、実際に地震が起きた際に冷静な対処ができるよう、シミュレーションを促すことを目的としています。

地震リスト

今回の起震車では過去に起きた数々の大地震のシュミレーションができました。

横浜市消防局では合計4台の起震車があり、それぞれ自治体などのイベントや訓練に毎日フル稼働しているそうです。大きな揺れを人工的に起こすので、専門業者による細やかなメンテナンスを必要とし、点検で不具合が見つかった場合には予定していたイベントにも出動できないこともあります。こういったことからも、今回の鶴見どろんこ保育園で、起震車での体験を実施していただいたことはとても貴重な機会となりました。

当日の体験の様子

当日の天気予報は曇りのち雨でしたが、なんと午前中は晴天。鶴見どろんこ保育園のエリアを管轄する鶴見消防署 末吉消防出張所よりお二方にお越しいただきました。

体験乗車をするのは年長であるこめ組の5歳児のみ、また、事前に子ども達に地震についての説明を十分に行い体験するかどうかは本人の意思を尊重することなどを改めて確認しました。5歳児のみに体験をしぼった理由として、地震の概念がきちんとないまま「怖い体験」としてだけ記憶に残してしまうことは避けたい、半年後には小学生となり一人で通学が始まるこめ組の子ども達には今必要な体験ではないかという考えからでした。

小さな子ども達は見学

年少の子ども達は体験前に見学を行いました。「大きいね~!」「かっこいいね~!」という声があがっていました。

事前に説明
乗車前にも改めて説明を受けます。消防署の方のお話に「僕も大きくなったら消防士になりたい!」という子も。
体験開始
5人ずつのグループに分かれて乗車します。スイッチを押して地震体験スタート。
揺れを体験
中越地震、関東大震災、などの震度7クラスのタイプの異なる地震を体験しました。座っているのがやっとの揺れが60秒以上も続きます。
保育士につかまる子
揺れは60秒以上も続きます。関東大震災では一旦収まったように思えたところから強い地震が再度起こり、被害が広がりました。怖くなってしまった子も。

子ども達や職員の感想

自分のグループの順番が来るまでに様子を見ていて怖くなってしまった園児一人を除いて、こめ組全員が体験しました。

感想を伝える子ども達
体験後の感想を伝える子ども達

子ども達からは

・全然動けなくてびっくりした
・今日は何もなかったからよかったけど、何かあったらおもちゃとか飛んできたりしたら危ないと思った
・動けなくてどうして良いか分からないから、地震が起きたらちゃんと大人の話を聞いたほうが良いと思った

体験中は遊園地のアトラクションに乗っているような笑い声が上がりましたが、体験後は今まで経験したことのないような揺れに、子ども達も感じるものが多くあったようです。

職員からは

・「これから揺れます」と事前に言われて、頭では分かっていても身動きが取れなかった。これが予告なしに突然くることを考えると本当に備えが必要だと改めて気が引き締まる思いがした
・実際に起きた場所や状況でも瞬時の判断が必要だと思うと怖くなった。いつ、いかなる時も「今起きたらどう動くか?」「どうしたら子ども達を守れるか?」を念頭に置きながら日々の保育にあたっていきたい
・東日本大震災を青森で被災したときは学生でした。その時の恐怖がよみがえりました。今は保育士として子ども達の命を預かる立場。過去の事例や今回のシュミレーションを生かしながら不測の事態に備えたいと思います

「想定外」に備えて。職員の意識を高めたい

子どもが体験した後には職員だけで地震体験をさせていただきました。

職員が体験
職員達は関東大震災の体験をしました。

江間園長が起震車での体験を実施したかった理由、それは実は子どもだけでなく、職員への想いもあってのことでした。
「子ども達の意識も大切ですが、その子ども達の命を守る保育士・職員達への意識も改めて高められる機会が欲しいとずっと思ってきました。東日本大震災の時にまだ学生だった職員も多くなってきており、いつどこで、どんな規模の地震が起こってもおかしくはないと言われている昨今、毎月行っている避難訓練も、防災教育も形だけのものになってしまっては意味がありません。避難訓練の意味も、今回のような揺れを疑似体験することで子ども達・職員共に、より深まることを期待しています。」

鶴見どろんこ保育園外観
鶴見どろんこ保育園
各フロアのハザードマップ
鶴見どろんこ保育園、各フロアのハザードマップ。

保護者の方に代わって大切なお子さんの命を預かる立場として、江間園長の保育者としてのプロ意識が今回の企画を可能にさせたのかもしれません。
消防署の方のお話によると、毎日フル稼働の起震車に定期的に来てもらうことは不可能に近いそうですが、今回の経験から鶴見どろんこ保育園の職員・子ども達が学び取れたものは沢山あったようです。

鶴見どろんこ保育園

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