臨床現場25年の看護師が、郡山どろんこ保育園で新たなスタート
2018.12.20
2018年4月に開所した郡山どろんこ保育園が、『緑の環境プラン』ポケット・ガーデン部門で大賞を受賞したというニュースを10月にお知らせしました。その立役者ともいうべき同園の三浦名実さんは看護師です。総合病院の臨床現場で約25年間勤務し、小児科、外科など、ほぼすべての科をまわってきたキャリアを持ちながら、保育の世界へ飛び込みました。そんな三浦さんに保育への思い、受賞のいきさつなどを聞きました。
保護者を支え、子どもたちに愛情を。保育園ナースとして新たな一歩を踏み出した
―― 保育現場へ転身されたのは、どうしてなのですか?
新卒以来、臨床現場で走り続けてきました。息子は保育園の延長保育のお世話になって、小学校へ上がるまでは夜勤もこなしました。息子は今、高校生です。いずれ地元を離れていくのかなと考えた時、小さいころにあまり関わってあげられなかった後悔が残っていることに気がつきました。臨床の仕事はもうやり切った満足感もあったので、今度はもっと子どもと関わる仕事をしようと思ったんです。保護者が安心して仕事へ行けるよう支えとなって、子どもたちにはさみしくないよう愛情を注いであげたいです。
―― どろんこ保育園に決めたのはなぜでしょう?
新規開園の募集があったので調べてみて、いい園だなと感じました。外遊びや畑仕事といった原体験の機会や地域交流が盛んなこと、日々の保育では子どもが自分で考えて行動することを大切にしていること、など、子どもの心身が豊かに育つための環境がここにはあると思いました。
そうした保育理念のほかに、保護者の方への対応でも心を打たれた点がありました。例えばお預かり中に子どもが37度5分以上の熱を出した場合、まずは熱があることのみを保護者にお伝えし、園でしばらく様子を見ます。平時よりも熱があるからといって杓子定規的にすぐにお迎え要請をするのではなく、どの程度なら園でお預かりが可能か、お迎えが必要なのかを看護師としてしっかり判断してあげることで、保護者も助かると思うのです(※)。看護師として病院に勤めていた時に、若い看護師さんたちが保育園からバンバン呼び出されて苦労している姿を何度も見てきましたから。ここは子どもにも保護者にも寄り添える保育園だと思ったのです。
※通常どろんこ会グループの保育園では、37.5~37.9度の場合は体調不良の報告、38度以上の場合は都合がつけば早目のお迎え依頼、容態悪化やお迎え困難の場合は医師の指示を仰ぐ、または受診、などの流れをとっています。そして、体調不良の子は必要に応じて別室で様子を見るなど、臨機応変に対応しています。
―― 0歳児の担任としてクラスを受け持つことの難しさはありますか?
産婦人科の経験もあるので、赤ちゃんのお世話や発達などは分かるのですが、保育についてはまだまだ駆け出しです。赤ちゃんが楽しめるお歌も、泣いている赤ちゃんが何を訴えているのかを把握することも勉強中……言葉かけ、タイミングは特に難しいです。子どもたちが遊びに没頭している時、今は入っていいのかな、それともジャマしちゃうかな?と、いつも迷ってしまいます。若い保育士さんたちから教わりながら日々勉強と思ってやっています。
―― どろんこ保育園ならではだと感じることはありますか?
ここでは年齢に関係なく外でどろんこ遊びをするのですが、その時の子どもたちの表情や元気さはどろんこ保育園ならではだなと感じますね。0歳児も園庭に出て土を触ってよく遊びます。その時の子どもの表情や動きは、何度見ても釘付けになります!何か気になるものがあると、真剣にじぃーっとそこを見る子どもたち。じたばた動いていたのに、ぴたっと動かなくなるんです。なめてみたいのかな?それとも匂いをかぎたいのかな?きっと、いろんな感覚をフル回転させていっぱい考えてるんだろうなと感じます。0歳児でも、遊びを通していろんなことを発見していると実感できる瞬間は、保育の仕事をしていてよかったなと思いますね。
園庭を地域と交流できる森にしたい
――『緑の環境プラン』に応募したプロジェクトが、ポケット・ガーデン部門の大賞に選ばれました。どういった想いで応募したのでしょうか。
この園を卒園した子ども達が小学生や中学生になっても友だちを連れてきたり、近所の方も遊びにきたり、園児以外の地域の皆さんが憩えるような開かれた森を創りたいと考え、『緑の環境プラン』に応募しました。園庭をより自然あふれる魅力的な場にしたいんです。ビオトープ、木や花の植栽、ハーブガーデンなども盛り込んでいます。
―― 園児だけでなく、地域の方々のための場所を創りたいという想いがあったのですね。
3.11の震災の後、この地域も除染がなされましたが、やはり子どもたちを外で遊ばせるのを不安に思う保護者の方や、家庭菜園などで土に触れるのをやめてしまった人もいます。だから、この園に新たな森を創れば、皆が安心して自然の中でのびのびと過ごせるのではと思っていたところ、真島園長が本コンクールの情報を見つけてきてくれたのです。すでに飼育しているメダカやドジョウを水槽の中でなくビオトープで育てたらどうか?保育園自体を地域の人とも交流できるような森にしたらどうか?と盛り上がり、発起人となってスタッフを巻き込んでいきました。園長も私も、決めたら突っ走るタイプなので(笑)。
―― 通常業務に加えてのコンクール応募準備は、どんな苦労がありましたか?
大変だったのは設計です。まったく素人でやり方がわからなかったので、インターネットで設計図の書き方を調べて、自分で作ってから建設会社に持ち込み、見積もりを出してもらうんです。建設会社さん、造園会社さんも協力的で、かなりの低予算で引き受けてくださいました。本当にありがたい話です。そしてその分、マンパワーは我々スタッフも担います!一緒にこの園庭を創り上げていきたいです。
―― 今後の抱負を教えてください。
来年、保育士資格をとろうと勉強しています。今の自分に足りない知識や技術を身につけて、保護者や同僚たちにとって頼れる存在になりたいです。
看護師だから、保育士だからと職位で仕事を切り分けない
三浦さんにインタビュー後、真島園長にもお話をお聞きしました。真島園長は三浦さんを「誠実で向上心が高い方」と評します。また、看護師の経験によって「彼女が命の尊さや尊厳を語ると、子ども達の心への響き方が違う」とも。「看護師だから、保育士だからと職位で仕事を切り分けるのではなく、職員ひとりひとりが『保育者』としてさらにより良い保育環境を追求するのがどろんこ会グループの理想です。これからも三浦さんや他の職員とともに郡山どろんこ保育園を盛り上げていきたいです」(真島園長)。
園庭の緑化プランは本年度中に工事を進めて、来春には園庭に「森」が完成します。地域の方々とともに創る地域交流の場の誕生は、どろんこ会グループが大切にしている「人対人コミュニケーション」が形となった好例。園庭の「森」完成後の活用とともに、新園である郡山どろんこ保育園が三浦さんのような看護師や他の職員たちとともにどんなふうに進化を遂げていくかとても楽しみです。
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