中里どろんこ保育園(東京都)の公開保育と汐見稔幸先生を招いた勉強会 後編
2019.01.17
保育の質を高めるために、様々な研修や自主勉強会、公開保育が開催されているどろんこ会グループ。中里どろんこ保育園(東京都清瀬市)で行われた公開保育と、汐見稔幸先生(臨床育児・保育研究会代表、東京大学名誉教授、白梅学園大学前学長)をお招きしての勉強会レポートの後編となる今回は、職員同士の振り返りの様子をお伝えします。
「中里どろんこ(東京都)の公開保育と汐見稔幸先生を招いた勉強会 前編」はこちらから
公開保育中の様子
前半の焚き火の活動では、参加者は時折、子ども達と遊んだりお話をしたりしながらも、一歩引いた場所から様子を見学していました。焚き火が終わり、給食が始まるまでの時間は、コーナー遊びの様子を見てまわります。実際に保育にも入りながら、各コーナーでどのような遊びが展開されているのかを観察していました。
公開保育の振り返り
お昼休憩後に振り返りと勉強会がスタート。お互いの自己紹介とともに、中里どろんこの職員と参加者が公開保育の感想や意見、自園での課題を話し合いました。
参加者の感想の中で多かったのは職員の声の大きさでした。
参加者A(20代女性保育士)
「職員の声があまり聞こえないことに驚いた。自園では園長に『先生たちの声が大きいよ』と指摘されて、各職員が改善を目指しているところ。焚き火もやっているが、危ないよと言ってしまうことが多い。中里の職員はほとんど言っていなかったのが印象的だった。」
参加者B(20代女性保育士)
「大人からの言葉がけが多いと、子ども同士のやり取りを邪魔しているのかもしれないと気づいた。」
中里どろんこ職員(主任保育士)
「私も最初はついつい『熱いよ』『危ないよ』と言ってしまっていたんですが…岡田園長に『言わなくて大丈夫だから』と言われて、あらためて気をつけました。数ヶ月前は、私たちも園長に『先生の声が大きいよ』と指摘されて、大人が大きな声を出さないように心がけてきました。」
岡田園長
「職員たちには、何か話したいことがあるなら、『◯◯先生!』って大声出して話すのではなく、近くに寄って話すように伝えてきました。大人の声が子どもにとって騒音になってはだめ。大声をなくす工夫の例として、中里では縁側の日よけで遊ぼうとする子に言葉で注意するのではなく、日よけに『✕』マークをつけました。『✕』マークを見れば子どもは、遊んではダメなんだと分かりますから。」
他の参加者(20代男性保育士)からは「今日は見学者として子ども達と関わることで、けんかの場面でも「なぜ、この子はおもちゃを取っちゃったのかな」「取られた子が、最後に『どうぞ』と渡した時の気持ちってどうだったのかな」と子どもの気持ちに寄り添う余裕があった。自園では忙しい気持ちが先に立って、子どもの心を見逃しがちになっているかもしれないと気づいた」と自身の保育を振り返る声もありました。
「子ども自身が気づく環境づくり」について考え続ける
職員たちが各自振り返った後、汐見先生からは様々なフィードバックがありました。その中の一つ、コーナー遊びについては、こう話されていました。
「きれいにコーナーができて、間が廊下のようになっていますが、飽きた子ども達が走りやすい空間とも言えます。走り出すと、先生の『走ると危ない!』の注意につながりますよね。先生が注意するのではなくて、部屋の中は走る所ではないと子ども自身が気づく環境を作るべきなんです。例えば、ジグザグにコーナーを作る。走りにくいし、走ろうとすると遊んでいる子にぶつかってしまう。遊んでいる子から『遊んでいるのに邪魔しないで!』と言われる。そんなやり取りを通して、『あ、そうか部屋の中は走るところではないのか』と気づくことが大事なんです。走る子が出てきたら一度改造を検討して、before/afterを記録してみるのも良いでしょう。」
岡田園長が公開保育で若手保育士に気づいてほしいと考えていたことも、汐見先生のフィードバックと同じ「子ども自身が気づく環境を作る」ことの大切さでした。勉強会が終了した後も、時間が許す限り、保育について話し合う中里どろんこの職員と参加者たち。今回得た「子どもを言葉で動かさない保育」への気づき、学びを自園の保育でどう取り入れたのか、次回はお互いに発表し合うことが決まり、職員同士の学びの場はさらに深まっていくようです。今後の様子もレポートしたいと思います。
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