ペアレント・プログラムで保護者に寄り添い、家族全体をサポート
2019.02.21
行動が問題なのではなく、その行動をどう捉えて、どう見ていくか―。「ペアレント・プログラム」は、保護者の子どもの行動を捉える視点を肯定的に変えていくためのプログラムです。発達支援つむぎ 阿佐ヶ谷ルームでは、保護者支援の一環としてペアレント・プログラムを試験的に実施。その内容や、取り組みに至った経緯などを小川施設長の想いとともに紹介します。
子どもの行動を肯定的に捉えるペアレント・プログラムとは?
前職も児童発達支援事業所で働いていた小川施設長ですが、保育園と連携して活動できる発達支援つむぎに興味を持ち、3年前にどろんこ会グループへ転職。保育士の資格も取得しました。そして今、力を入れて取り組んでいることに、利用児童の保護者に向けたペアレント・プログラムがあるといいます。
「発達障害や子どもの発達に悩む保護者への支援としてペアレント・トレーニングというものがありますが、このトレーニングの講師になるためには心理学や応用行動分析などの専門的な知識が必要で、かつ、保護者にとっても高度な内容となり、受講料が高額である場合が多くあります。そのため、発達に悩む保護者だけでなく、子育てに不安や悩みを持つ保護者の誰もが気軽に取り組めるもの、保育園や児童館など子育て支援に関わる人が研修を受けると講師として実施できるものとして、ペアレント・プログラムが開発されました。ペアレント・プログラムでは、主に保護者が子どもの行動を肯定的に捉える視点を身につけることを学びます」と小川施設長は説明してくれました。
困った行動の中にも、子どもの「できた!」を見つけていく
つむぎ阿佐ヶ谷ルームを訪れたこの日は、5名の参加者が「困った行動の中にも、子どもの『できた!』『できている!』」を見つけるグループワークを行っていました。
「大人は困ったことがあっても、いろいろ対処しながら生活できます。要らないものを捨てられないことが困った性格でも、ゴミ屋敷になる前に片づけられますよね?大人自身は自分の困った行動の中でも、最悪の事態になる手前ギリギリセーフの『これはできている』点は見つけやすいですが、子どもについてはどうですか?」と小川施設長の問いに、皆さん考え込みます。
ペアレント・プログラムでグループディスカッションを取り入れているのは、こうした親自身が一人で判断できないこと、分からないことをグループでシェアし、子どもの困った行動をいろんな視点で捉えることで、問題点や解決策を見つけていけるから。あるお母さまは、買い物途中に子どもが駄々をこねていなくなり、いつのまにか一人で家に帰っていたエピソードを話してくれました。お母さま自身は「困ったこと」として捉えていたけれど、他の参加者からは一人で家に帰れたことに「ちゃんと交通ルールを把握できていてすごい!」という意見が。困ったと捉えた行動も、着目点を変えると「できている」ことが見えるようになります。
小川施設長は「頑張ったところ、挑戦しようとしているところだけじゃなくて、たまたまできたこと、お手伝いしながらもできたこと、子どもの『ここまでできた』を見つけて具体的な言葉で子どもに伝えてあげてください。子どもの次の行動にもつながっていきます」と伝えていました。
子どもの行動を具体的に伝えて相談上手に
「子どもの困った様子について相談する時に『ダラダラしているところが気になる』と伝えても、どんなことでダラダラしているのか、相談相手はわかりません。それよりも『いつも服を脱ぎっぱなしでダラダラしている」と具体的に伝えるほうが、相談相手もアドバイスしやすくなります。つまり、行動で見る術を身につけることは、相談上手にもなれるということ。保護者の皆さんには相談上手になってほしいんです」と小川施設長は話します。
「保護者の方が困ってどうしようもなくなる前に、もっと助けてあげる方法があるんじゃないか。その答えのひとつがペアレント・プログラムだと思っています。まだプログラムは完了していませんが、参加者の方々が改めて自分と子どもについて考えたり、客観的に子どもの行動の良い点を見るようになったりしています」といろいろな手応えを感じているようです。
地域に根差した発達支援・保育を目指す
小川施設長に、普段の発達支援で心がけている点を伺いました。
「発達支援つむぎに来る子どもたちはとても敏感で、周りと比べて何ができて何ができていないか、大人が考えている以上に子ども自身がわかっています。だから、子どもたちにはそのままでいいんだよ、という気持ちで接するようにしています。子どもたちの『できた!』は一緒に喜びますが、できたことを評価することだけが良いのではなくて、できない時もそのまま受け止めることが大事なのだと思っています。ここに来れば楽しい、ここは居心地がいいと思ってもらえることを一番大切にしていきたいです」。
「今後は、発達支援・保育の観点から、地域の子どもたちの成長を長く見守れるような活動も考えていきたい」と目を輝かせながら語ってくれました。
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