アパートの一室を活用し「地域で子育て」を実現する院内保育室
2019.02.26
茨城県ひたちなか市にある医療法人社団 浦川会 勝田病院。『地域から信頼される病院』という理念のもとで古くから地域に愛される勝田病院の院内保育所「おひさま保育室」は、運営をどろんこ会グループが担っています。保育室があるのは病院近くのアパートの一室。限られた空間ではありますが、大自然に囲まれ、地域の方々に支えられ、子どもたちはのびのびと過ごしています。同園の園長、岡野左枝子さんにインタビューし、アパート内で保育をする難しさや工夫したところ、地域交流の様子などをお聞きしました。
地域に育てていただいている保育室
―― アパートの一室を保育室として利用するにあたり、工夫している点はありますか?
グループの他の園と違い、アパートの一室なので園庭もなく、園内も決して広いとはいえません。しかしそこは職員全員の創意工夫でカバーしています。どろんこ保育園では雑巾がけを日課としていますが、ここは廊下がほとんどないのでキッチンの床を皆で拭いているんですよ(笑)。
そんなふうに多少の不便さや難しさはあるかもしれませんが、この自然に囲まれたすばらしいロケーションは「おひさま保育室」のメリットだと思っています。一歩、保育室の外に出れば畑があって山があって川があります。まさに、天然の庭がすぐそばにあるんです。
「今日は山に登ってみよう」「川でザリガニを採ってみよう」「農家で芋掘りをさせてもらおう」など、本当にたくさんのお散歩コースがあります。近くには商店街もあるので、商店街ツアーをすることもあるんですよ。その体験を通してどろんこ会が大切にしている「にんげん力」を育む保育をしていきたい、と考えています。
―― 室内遊びの面では何か工夫している点はありますか?
室内での遊びにも自然を利用したものを多く取り入れています。
冬なら干し芋を作ったり、葉っぱを水に浮かべて玄関先に出して凍らせたり、しいたけを栽培してみたり。先生同士でアイデアを出し合って、さまざまな体験ができるよう工夫しています。
―― 園での干し芋作りは恒例行事ですか?
ひたちなか市は干し芋の生産が特に盛んな地域で、保育室の周りの農家さんでも多くの方が作ってらっしゃいます。そこで、時期になるとさつまいも掘りをさせていただき、採った芋の中でも細いものを選んで干しています。干し芋作りはすっかり毎年の恒例行事になっていますね。干し芋は、作るのも食べるのも子どもたちは大好きですよ!
―― ご近所の方々との触れ合いで心がけていることはありますか?
どろんこ会グループの方針でもありますが、お散歩をしているときは出会った皆さんにご挨拶をしています。ご近所の方々が本当に優しくて、子どもを連れて歩いていると皆さん声をかけてくださるんです。高齢の方は、子どもたちを本当の孫のように可愛がってくださいます。
今日は、ご近所のおばあちゃんに干している途中の切干大根を見せていただいて、お土産に干し芋もいただきました。子どもたちはそれをしっかり握ってパクパク。あっという間に食べていましたよ(笑)。
お世話になった方にはお礼に、子どもたちが敬老の日などに作った作品をお渡ししています。皆さんお部屋に飾ってくださっているようです。こうした交流を重ねることで、地域で子どもたちを育てていることを日々実感しています。感謝の気持ちでいっぱいですね。
―― 岡野園長にとって印象に残るエピソードを教えてください。
いつもお散歩をしながらいろんなところでご挨拶をしているんですが、ある時、近くの八百屋さんで買い物をしていた方からバナナをいただきました。八百屋さんにご挨拶をしている私たちを見て、「今度来たら食べさせてあげよう」と、いつ来るかも分からない私たちのためにバナナを買って待っていてくれたんです。本当にビックリしましたし、その心遣いがすごく嬉しかったですね。
子どもたち一人ひとりの想いを大切に
―― 日頃、保育をする上で一番大切にしていることを教えてください。
子どもたち一人ひとり、個人の想いを大切にするよう心がけています。
例えば、日によってお散歩に行きたい子もいれば行きたくない子もいるかもしれません。行きたくない子に対して、無理に連れ出す、あるいは簡単に「行かなくていいよ」と言うのでなく、まずはその子と向き合ってどうしてお散歩が嫌なのかを探ってみます。何かがひっかかっていると思うのですが、それを取り除くお手伝いをして、お散歩への意欲が自発的に湧くのを待ちます。
お散歩のコースは事前にある程度は私たちが決めますが、子どもたちの状況に合わせて行く場所を変えたり、1人の子が興味を持ったことに皆で注目してみたりと柔軟に対応しています。そのための職員同士のコミュニケーションも大切ですね。常に子どもたちの状況を確認し合いながら保育をしています。
―― どろんこ会グループの他の保育園と院内保育所の本園で異なる点はありますか?
私たちが行う保育の内容に違いはありません。クライアントである勝田病院様は、保育に関して全てこちらにお任せくださっています。
ただ1つだけ、系列の老健施設との交流をしてほしいとご要望をいただいているので、行事やイベントの際にお邪魔して、おじいちゃんおばあちゃんと子どもたちが触れ合う機会を作っています。
また、保護者の方々が皆さん同じ病院で働いている点は、こちらで常に意識しています。子ども同士、時にはケンカをしたり気持ちが衝突することもありますが、保護者の方々が職場で気を遣い合うことがないよう、報告の仕方は工夫しますね。また、どうしても急患などでお迎えが遅くなることがありますので、臨機応変に対応するようにしています。
自然に「ありがとう」と言える関係性
―― 岡野園長が職員同士のコミュニケーションについて意識していることはありますか?
特に意識して、ということはありませんが、いつからかお互い「ありがとう」をよく口にするようになりました。何かしてくれたら「ありがとう」。心の中で思っていても、なかなか口に出せない言葉ですよね。そう自然に言い合えるここの職員が素敵だなあと思っています。
―― 今後の抱負や目標がありましたら教えてください。
これからも、子どもたち一人ひとりの思いを大切にした保育をしていきたいです。地域の皆さんにも可愛がっていただけているので、この関係性を続けていき、ここを長く愛される保育室にしていきたいです。
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