園児と職員、皆で創り上げた、中里どろんこ保育園初の生活発表会
2019.03.07
日常の保育を「見える化」したい
2018年4月に開園した中里どろんこ保育園にとって、今回の生活発表会は初めての記念すべきもの。
「中里どろんこ保育園では毎日どんなふうに園児や職員が過ごしているのかを参加してくださる方々に感じてもらいたくて、作品展やお遊戯会とは一味違った生活発表会にしたいとずっと思っていました」と語る園長の岡田さん。一年の集大成をどうやって披露するか、園児や職員皆で協力して考えていった、と話を続けました。
辿り着いたのは、園全体を使って学校の文化祭のようなブース形式で生活発表会を行う方法。「展示コーナーの子どもたちの作品や職員によるメモを見れば、中里どろんこ保育園の日常がよくわかると思います。また、親子一緒に手作りおもちゃの制作を楽しんだり、作品自体で遊んだりと、保育を体験できるようにも工夫しました。園児たちの発表の場も用意したんですよ」(岡田園長)
メモ書きには、制作物を作る過程での出来事や保育風景が細かくつづられています。また、「なぜ、子どもの手の届かないところに絵本が飾られているの?」「なぜイラストやマークではなく、文字で場所を示しているの?」といったQ&Aもありました。
全職員の活躍を伝えられる場にしたい
生活発表会を開催するにあたり、もう一つ大切にしたことが、「職員全員が表舞台で関わる」ことだったのだそう。日頃活躍してくれている職員の姿が『見える』場にしたいという想いがあったと説明します。そのため、保育士はもちろん、子どもたちの食を守っている調理師もブースを担当していました。
調理師ブースでは、野菜を中に入れたブラックボックスが登場。子どもたちがドキドキしながら手を突っ込むと……「あ、きゅうりだ!」と声を上げて中の野菜が何かを周りの友達や保護者の方々に報告していました。
そのほか、箸で豆をつまむゲームコーナーを設置したり、子どもたちにも大人気のおやつのパンをふるまったりと、来てくれた皆が楽しめるブースとなっていました。
大人気のワークショップコーナーでおもちゃ作りを体験
ワークショップコーナーで実施したのは「スライム作り」。
ホワイトボードには、スライムの材料と作り方が書かれており、子どもたちはそれを見て、職員に「1のコップをください」「2のコップをください」と声を掛けていました。そのコップを手に、大きな子どもは次々と自分で作業を進めてスライムを完成させ、小さな子どもは保護者に手伝ってもらいながらスライム作りを楽しんでいました。
このワークショップは、親子が楽しむためだけではなく、ワークを通して子どもたちの成長ぶりを知ってほしいという想いから企画したもの。たとえばスライムには様々な色をつけることができ、その色を「自分で選ぶ」必要があります。どんな色にしたいか、自分は何色が好きなのか。「自分がいいと思ったものを自分で選ぶ」ことを大切にしている中里どろんこ保育園の理念がよく表れたワークとなっていました。
歌や楽器の披露も!目玉は「ナイアガラの滝」
4歳児5歳児クラスの園児は、手話付きの歌やハンドベルの発表を行いました。曲目は子どもたちのリクエストで決めたそう。
圧巻だったのは5歳児クラスの「ナイアガラの滝」。たくさん見どころが用意された中里どろんこ保育園の生活発表会でしたが、中でもこの積み木の「ナイアガラの滝」の実演に参加者皆が息を飲み、感動しました!
5人の子どもたちが、積み木を重ねて組み立てていきます。
ひたすら黙々と取り組む子。保護者の目があることから緊張を隠すためにわざとふざけながら取り組む子。制作過程ではそれぞれの個性が垣間見えるおもしろさも感じられました。
担当場所はあらかじめ決めず、子どもが自分で周りを見ながらどこに積み重ねていくかを考えて作業をしていました。自然とチームワークができていることに驚く保護者の方も。
およそ20分。最後には子どもたちが椅子の上に立ってようやく届く高さにまで達しました!
しかし、これで終わりではありません。「ナイアガラの滝」は壊すまでが本番です。「最後まで崩れたら成功です!」の掛け声のあと、一番下の端の積み木を職員が抜き出します。
「わああっ!」観客と子どもたち双方から歓声が上がり、ナイアガラの滝は見事に最後まで崩れ落ちました。実は、当日までに練習した際は、崩し切ることがなかなかできなかったのだそう。「本番に強かったですね。大成功でした!」と岡田園長も顔をほころばせていました。
生活発表会を「次」につないでいくきっかけのひとつに
4、5歳児の歌やハンドベル、「ナイアガラの滝」は、年少の子どもたちも見守る中で行われました。「自分よりも年上のお兄さん・お姉さんの様子を見て、『大きくなったらこんなすごいことができるんだ』『来年は僕もあんなことができるんだ』と年少さんたちは期待感を抱くきっかけになってくれたのではないでしょうか」(岡田園長)
生活発表会を終えた2月4日(月)。「今回の生活発表会を通して『自分が成長した』と思ったこと」をあらためて子どもたちに問いかけました。「集中力がついた」「あきらめないで頑張ってよかった」「皆がもっと仲良くなった」「自信をもってやってみたらできた」「やめようと思ったこともあったけど、皆でやったら楽しかった」と口々に話してくれた子どもたち。自分の成長を客観的に見つめ、言語化できていることに驚かされます。自分の感情や考えを的確に言語化できたのは、日々の保育のなかで重ねてきたコミュニケーションが土台となっているからでしょう。
また、子どもたちが語った「成長」は、これからの社会を生きる子どもたちに必要だと注目されている「非認知能力」です。非認知能力とは、「感情のコントロール力」「目標に向かって頑張る力」「人とうまく関わる力」、つまり、どろんこ会グループが重視する「にんげん力の基礎になる力」のこと。子どもたちの言葉から、日頃の保育を経て生活発表会当日を迎え、確かに非認知能力=にんげん力の基礎が育まれていることがわかりました。
開園2年目を迎える来年度には、中里どろんこ保育園も子どもの人数が定員いっぱいになる予定です。岡田園長は「人数が今年より増える分、来年はまた違った保育の仕方があると思うんです。その時々に適した保育を職員同士話し合って見つけていきたいですね」と語ります。
生活発表会は良き節目ではありますが、これがゴールではなく、同園の保育は2年目、3年目と今後も切れ目なく続いていきます。来年はいったいどんな集大成を見せてくれるのか。園児とともに園の成長にもぜひ期待を寄せたいです。
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