【職員インタビュー】「食」から子どもの原体験に携わる栄養士の仕事
2019.05.30
保育施設で子どもを見守るのは保育士だけではありません。毎日の給食を担う栄養士・調理師も、その一人。食育を大切にするどろんこ会グループにおいて、給食を担当する調理スタッフは保育士同様重要なポジションです。
今年度で9年目を迎える調理スタッフの鈴木さん。大学を卒業後、栄養士資格を取得。新卒でどろんこ会グループに入社し、現在は、北千住どろんこ保育園で働いています。今回は鈴木さんのお仕事の様子を見学し、お話を聞かせてもらいました。
子どもたちの原体験に、食の分野から携わりたい
北千住どろんこ保育園を訪問したのは、給食の時間です。幼児クラスの子どもたちが賑やかに食べるなか、鈴木さんも自分の給食を持って子どもたちと同じテーブルにつきます。
この日、食事を共にしたのは年少クラスの子ども達中心のテーブルです。鈴木さんが席に着くと、別のテーブルにいた子ども達も食器を持ってそばにやってきます。残りのおかずを端に寄せてもらいに来たり、この日の主菜だった鮭をほぐしてもらいに来たり。鈴木さんはその度に箸を止めて一つひとつ丁寧に対応します。
それと合わせて、他のテーブルの子どもにも心を配り、食べ進み具合を見ながら言葉をかけていました。
合間合間に食べながら「いつもこんな感じでバタバタしているんです」と笑う鈴木さん。とても楽しげな印象でした。
――栄養士・調理師の仕事が必要とされるのは、保育施設だけではありません。鈴木さんが保育園を新卒で選んだ理由は何でしょうか。
献立を作ったり調理したりするだけではなく、食べてくれる相手と関わりたいという想いがありました。就職活動のときには介護施設や病院、幼稚園も検討したのですが、どれも直接相手と触れ合う機会があまりない仕事だったんです。
――保育園のなかでもどろんこ会グループを選んだのはなぜでしょう。
まず、地元・福島を出るという目的がありました。母からも「地元を出て社会経験を積んだほうがいい」と言われていたのもありまして。
そこで、いくつかの保育園を調べているなかでどろんこ会グループを知りました。「原体験」を大切にしている園なんだと知り、「食」から子どもの原体験に関われるんじゃないかと思ったんです。
ーーでは、地方から上京する形で仕事を始められたんですね。心細さや大変だったことはありましたか?
新卒としての緊張感だけではなく、私が入社する1カ月前に東日本大震災が起こったことによる大変さがありました。地元が大変なことになっているなか、本当に出て行っていいのか、迷いも生じたんです。交通網も混乱してしまっていたため、無事に引っ越せるのかという心配もありました。
そうしたことを乗り越え、配属先のメリーポピンズ神楽坂ルームで働き始めました。神楽坂ルームは0~2歳児が計25人という小規模園ということもあり、当時、常勤の調理スタッフは新卒の私一人だったんです。決まったレシピもなく、常に横について教えてくれる先輩はいません。右も左もわからないまま、何とか目の前の業務をこなしていく毎日でした。
ーー精神面的にも大変だったのではと思います。どのように乗り越えられてきたのでしょうか。
同じ園に入った新卒の保育士や他園にいる調理スタッフの同期とのコミュニケーションです。仕事後に飲みに行ったり、スマホでやり取りしたり。それぞれの場所でがんばろうね!という雰囲気が良かったのかなと思います。
本当に大変だったのは初めの3カ月くらいです。7月頃にはおおよその仕事の流れや自分のキャパシティがわかるようになったので、そこで初めて子どもたちに目を向けられる余裕が生まれ始めました。
学生時代に働いていたアルバイトでの調理経験も、新卒時の私を支えてくれたのかもしれません。
ーー子どもたちとたくさん関わっている姿が印象的でした。白衣を脱いでしまうと保育士なのか調理スタッフなのかわかりませんね。
私は子どもがいる場所にどんどん出ていきたいと思っているんです。「出て行ったほうがいいよ」と教わったわけではなく、自然とそう思うようになりました。特に、北千住どろんこ保育園は給食室が子どもたちから見えづらいところにあるので、こっちから出ていかないと子どもたちと触れ合えないんですよね。
給食室にこもってしまうと、子どもたちの実際の様子がわからないんです。噛む力やスプーンやフォーク、お箸へのステップアップはいつ頃がいいのかといった発達には個人差があります。保育士からも情報をもらいますが、私の目で見ることも大切にしたいのです。
保育士とは、顔を合わせたタイミングで互いに伝達事項を伝えあっています。特に0~1歳児の子どもは発達が著しいので、「そろそろ食器を変えてみようか」「スプーンを渡してみようか」など、こまめなやり取りを大切にしています。
子どもの様子を見ていたことは、献立を考える仕事を担ったときにも役立ちました。私は数年間、本部での献立作成に携わったことがあります。前任のベテラン栄養士の先輩が築いてくれた基礎をベースにしたのですが、子ども達の様子を思い出してメニューに少し変化を加えたいと提案することもありました。例えば、野菜がメインとなるラタトゥイユを、スープ仕立てにすることで食べやすくする、などです。こうしたアイディアは、子どもと触れ合っているから生まれてくるものですね。
一方、献立作成時に気を付けていたのは、現場経験です。調理現場を知らないと、栄養価のことにばかり意識がいってしまい、調理現場の現状が思考から抜け落ちてしまうことがあります。たとえば、野菜一つをとっても、根菜類と葉物野菜とでは洗う手間が異なるんです。時間短縮や現場の職員の手間を考慮し、レシピに葉物野菜が何種類も含まれていたときには、別の食材に変えられないか考えていましたね。
ーー鈴木さんは勤務9年目。今は後輩を育てる立場でもあります。大切にされていることは何でしょうか。
調理手順の裏にある理由を伝えることを大切にしています。また、1から100まで教えるのではなく、任せることも重要と考えています。うまくできなかった経験から学ぶことも大切なので。うまくいかなったことは「失敗」ではないと思いますが、「正解」でもありません。うまくいかなかった状態のままでいてほしくないので、正解の味や見た目も体験してもらって、また同じ調理方法やメニューが出てきたときにリベンジしてもらえる機会を作っています。
子どもとのやり取りも、私は何も教えていません。「行ってらっしゃい」と積極的に背中を押して出てもらっています(笑)
あとは、園長や保育士との橋渡しですね。想いは同じでも仕事内容が異なるため、みんなでいい方向に向かえるよう、職員同士コミュニケーションを積極的にとっています。
保護者の方とも、姿が見えたら出て行ってお話をしています。一緒に食事をとっているなかで見聞きしたエピソードを伝えたくてたまらないんです。反対に、保護者の方から「あんこが苦手なのに食べるようになったんです。どろんこ保育園で作ったから食べられるようになったって言っていました!」と嬉しい報告をいただくこともあります。これからもさまざまな食育活動をしていきたいです。
ーーこれからのキャリアステップをお聞かせください。
知識・スキルともにまだまだ伸ばしていかなければ、と思っています。アルバイト時代、「栄養士だからこそ調理スキルが高くなければいけない」と先輩たちに言われていたんです。その言葉を胸に今後も励んでいきたいと思っています。
あとは、0歳で入ってきた子どもが卒園するまで長期スパンで携わってみたいですね。
丁寧な仕事に子どもへのまなざしが表れる
北千住どろんこ保育園の中江川園長は、鈴木さんの仕事ぶりを「盛り付けの色鮮やかさからも、ひと手間を惜しまない丁寧な仕事が伝わってきます。自己研鑽の意識も高く、子どもへの想いが仕事に表れていますね。保育士とは異なる視点から提案をしてくれることも、とてもありがたいと思っています」と語ってくれました。
保育者の視点を併せ持ちつつ、食のプロとしてアプローチができる調理スタッフ。給食を作るだけに留まらず、どろんこ会グループでは原体験を子どもたちと共有できる仕事です。
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