「託児所」ではなく「保育園」を作りたい─ビックカメラ Bic Kids─後編

2020.02.27

#保育

Bic Kids 事業所内保育所

どろんこ会グループが運営受託している事業所内保育所「Bic Kids」。前編では、株式会社ビックカメラの根本様にインタビューした内容をお伝えしました。後編では、2019年度から園長を務める石川園長のインタビューをお伝えします。

前編:「託児所」ではなく「保育園」を作りたい─ビックカメラ Bic Kids─前編
園長を務める石川園長
園長を務める石川園長

──石川園長は2019年度から園長としてBic Kidsを任されているそうですが、園の特徴を教えてください。

Bic Kidsは、利用されている保護者の方の層が幅広いんです。大きく分けると、ビックカメラの社員と地域の方。さらに、社員も本部勤務社員や店舗勤務、シフト勤務のパート・アルバイトの方などに分けられます。また、このあたりは外国籍の方も多い。そのため、ご利用される曜日や時間帯もさまざまですし、子育てに関する考え方や文化も多種多様です。そういった多様な利用ニーズに応えながら、子どもたちにとって最適な保育をすること。これがなかなか難しいことではありますが、工夫しながら取り組むようにしています。

例えば、基本的には午前の早い時間にリズム体操や雑巾がけを行っているのですが、遅い時間からお預かりする子どもたちも経験できるように、朝の1回だけ、と限定せずにお昼寝明けの午後などに再度時間を設けています。

リズム体操の様子
リズム体操の様子

現在0・1・2歳児がメインなのですが、基本的には午前と午後の合計2回、公園に行ったり商店街などのお散歩をしたりしています。お散歩中に地域の方々との触れ合いが多いのも特徴ですね。

散歩の途中にあるお花屋さん
散歩の途中にあるお花屋さん
地域の方々と日々交流させていただいています
地域の方々と日々交流させていただいています

地域の方々には本当によくしていただいて、保育室の窓を網戸にした状態で開けているときなどは、お向かいのクリニックに来られる方たちが窓越しに話しかけてくださることも。お隣の八百屋さんが、お散歩で通りかかるときに人参やきゅうりをくださることもあるんですよ。

商店街を散歩する園児たち
商店街を散歩する園児たち

──地域の方に見守っていただけるのは、園としてもありがたいことですね。保護者の方と接するときに心がけていることはなんですか?

私自身、自分の子を育てながら、保育士としても多くの子どもたちの成長に関わってきました。その為、子育てにおける乳幼児の発達の一つ一つの時期が、いかに重要で大切かを経験からも学んできました。日々、子ども達と関わる中で大切にしたいことをスタッフと共有しながら、できるだけ保護者の方にもお子さんと接している中で私達が感じたことを伝えています。

例えば、なんでもかんでもこちらで先回りして手助けするのではなくて、子どもたちが「やりたい」というときはできる限り「見守る」。保護者の方には、お迎えのときなどに、「○○ちゃん、お散歩に行くとき『自分でやりたい』って言って園では一人で挑戦しているので、ここまではできますよ。なので、お母さんはその後、仕上げのお手伝いで大丈夫そうですね。」などと、子どもの変化やその日の様子を、些細なことであっても伝えるようにしています。

五感を刺激するどろ遊び
五感を刺激するどろ遊び
都心でも土にふれる経験を
都心でも土にふれる経験を
──日々子どもたちと接するなかで心がけていることはなんですか?

ここ数年で気になっていることなのですが、子どもたちの中に一定の姿勢を保てない子が増えてきたように感じています。背筋をまっすぐ伸ばして歩けなかったり、座るときもだらんとしてしまうんです。また、かかとをつけて歩けない子も増えてきていますね。そういう子のなかには、生後7カ月で立てたり、1歳前に歩き始める子もいるんですが、これはハイハイの期間が極端に短かったり、ほとんどしなかったりして、重心を安定して保つための筋力を鍛える機会が少なかったことも原因の1つと言われています。

ですから、重要な発達期の中にある子ども達の体幹を自然と鍛えられるように、なるべく芝があって起伏のある公園に行っています。公園選びは重要ですね。0歳児が裸足であがれたり、1、2歳児が自然と坂を上がったり駆け下りたりできるような状況を作るよう意識しています。

あとは広いところで職員がつけたしっぽを取る遊びをすることも。走らないと先生に追いつけないようにすることで、足の裏がしっかりつくようになるんです。体の芯を鍛え、自分でバランスを取れるようになることにも繋がっています。

芝生の公園で元気よく駆け回る園児たち
芝生の公園で元気よく駆け回る園児たち
 

──そうした取り組みで子どもたちに変化は見られましたか?

そうですね。特に手応えを感じているのは、起伏のあるところでのハイハイです。まだ寝返りもしない0歳児の頃からお預かりした子が、しっかりとハイハイし、その後、安定して歩けるようになりました。

あとは、食が細くて全然食べてくれないと心配していた子がよく食べ、しゃべるようになったり。様々なことに興味を示し始めたり。そういう変化を見るとすごく成長を感じますし、子どもにとっての1年はとても大きいですね。同時に、子ども達に寄り添い、見守る、保育士としてのやりがいも感じています。

「やってみたい!」という意欲を大切に、子ども達の成長を見守ります
「やってみたい!」という意欲を大切に、子ども達の成長を見守ります

──今後、取り組みたいことはありますか?

取り入れたいことや挑戦してみたいことはたくさんあります。例えば、今はスーパーマーケットやコンビニが多くなってきて、お店の人と会話をしながら買い物をする機会が減ってきていますよね。当園では、散歩の途中にお隣の八百屋さんから野菜を分けていただくことがあるなど、地域の方々との良い関係性に恵まれています。そのご縁もあり、最近ではお店で子どもたちと一緒に品物を購入させていただき、「コミュニケーションをとる」「ものを買う」経験に繋げています。子どもたちも「買い物」を楽しみ、意欲的に取り組んでいますよ。今後も、子どもたちの興味関心がもっと広げられるよう、さまざまな機会を作っていきたいです。

ほかにも、畑での栽培体験に取り組みたいと思っています。あいにく今は周辺にお借りできる畑がないため実現できていないのですが、使わせていただける畑を引き続き探していきたいですね。

関連リンク

株式会社ビックカメラ

Bic Kids

日本福祉総合研究所

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私達は子ども達の未来のために社会、世界を変えたいと思っています。事業所内保育園の運営もそのひとつ。子どもの預かり場としてだけではなく、質の高い保育を提供しています。事業所内保育園でありながら、どろんこ会グループの一園でもあるため、充実した研修や勉強会への参加が可能。保育スキルを磨き続けられますよ。

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