高校生が手作り遊具を寄贈。前原どろんこ保育園の地域交流
2020.03.05
2019年度に、沖縄初のどろんこ保育園として開園した前原どろんこ保育園(沖縄県うるま市)は、開園初年度から地域との関わりを大切にしてきました。縁あって実現できた取り組みが、美里工業高校建築科の生徒たちによる課題研究作品づくりです。2020年2月7日(金)に行われた寄贈式で、高校生たちが作った遊具やおもちゃが子どもたちに贈られました。
前原どろんこ保育園の岩田園長に、本取り組みに至ったきっかけや高校生と子どもたちとの交流についてインタビューしました。
美里工業高校との取り組みのきっかけ・取り組みの様子
──今回、美里工業高校の生徒のみなさんが手作り遊具を寄贈するに至ったきっかけについて教えてください。
岩田園長:私自身、今年度の前原どろんこ保育園開園を機に沖縄へ異動してきたばかりで、まだまだ知らないことばかり。そうした背景もあり、園として地域に根づくための取り組みを行いたい、つながりを作っていきたいとの思いがあったんです。当園の園児の保護者の方に美里工業高校に勤務されている方がいらっしゃって、生徒のみなさんが行っている課題研究作品の取り組みについて教えていただき、高校にもどろんこ保育園のことをご紹介いただいたのがきっかけです。
──いつ頃から話が進み始めたのですか?
岩田園長:5月頃ですね。まずは高校生たちが園に見学に来てくれまして、どのようなものがあればいいのか、子どもたちに適したサイズはどれくらいなのかを調べるところから始まりました。
──「このようなものがほしい」といった要望は伝えていないのですか?
岩田園長:はい。生徒のみなさんにアイディアを発揮していただきたかったんです。ただ、来園されたときの会話のなかで、「こんなものを作ろうと思っているんだけれど、まだ作れていなくて」といったお話はしました。どろんこ保育園が、既製品ではなく手作りのものを大切にしていることもお伝えしました。
──高校生が来園した際、子どもたちとの交流はあったのでしょうか。
岩田園長:大型遊具の事前設置の際に、再び来園してくれたときに交流がありました。当園には高校生でもチャレンジできる手作り遊具があるのですが、それに夢中になって挑戦する高校生たちの様子を子どもが見ていたり、一緒になって走り回ったりしている姿が多く見られました。この姿を見られたのは、職員にとっても非常に大きなメリットだったんです。
──どういう点でのメリットですか?
岩田園長:高校生たちは本当に無邪気に遊んでくれたので、子どもたちもすぐに寄っていき、遊びが自然発生していました。どろんこ保育園は遊びを大切にしていますが、高校生たちの姿から、「いつしか自分たちの意識が安全性に偏りすぎてしまい、『遊びこむこと』が少なくなってしまっているのではないか」という、私たち職員自身の気づきにつながったんです。
──大きなお兄ちゃんお姉ちゃんの訪問は、子どもたちにとっても嬉しいことだったのでしょうね。
岩田園長:ええ。印象的だったのが、たった1日しか会っていないにも関わらず、好きになった高校生の名前を憶えている子どもがいたことですね。その子のことを呼び捨てで呼ぶまでに慕っていて、高校の先生に「人気者だね、園に残る?」と冗談も言われていましたよ。
あと嬉しかったのは、高校の先生がどろんこ保育園のファンになってくださったことです。にわとり小屋に興味を示され、「こういう自然、生き物に触れ合う体験って大切ですね」とおっしゃってくださいました。
今回の取り組みを行ってみて
──どういったものが高校生から贈られたのでしょうか。
岩田園長:小屋、レゴブロック専用テーブル、ままごとキッチン、組み合わせ棚、ミニカー棚、収納付きベンチ、木製遊具、人形ベッド、木製滑り台です。リクエストをしていないので、見学後に何を作ってきてくれるのかは、設置までお楽しみでした。
──寄贈式はいかがでしたか?
岩田園長:高校生がそれぞれ自分が作ったものについて説明してくれたのですが、もう子どもたちがずっとわくわくしていました。さっそく遊んでいます。
組み合わせ棚は、文字通り組み合わせ方によってさまざまな使い方ができる棚なのですが、子どもたちはそれをおもちゃにして遊んでいます。作った高校生は、その使い方に「そうやって使うこともできるんだ」と思ったようです。子どもにとっては、なんでもおもちゃになるんですよね。
──岩田さんから見て、高校生の作品はいかがですか?
岩田園長:すごいな、よく考えて作ってくれたなと思いましたね。一生懸命さがとてもよく伝わってきました。開園当初、自分たちで3つは遊具を作りたいと思いながらも、初年度ということもあり結局まだ1つしか作れていなかったんですが、この取り組みのおかげで予定以上の手作り遊具を子どもたちに提供できました。
──今回のような園と地域との交流について、どうお考えですか?
岩田園長:今回、開園初年度にこうした交流ができたのは、非常に良かったと思っています。高校生が、それぞれ「何を作ると喜ばれるだろう」と考えられるきっかけを作れたことが、保育園、高校ともに実りのある交流になったのではないかと思います。
子どもたちに関しては、この1年、週1回商店街ツアー(地域交流)を行ってきたことによる成長が見られたなと思っています。知らない大人に会ったときに物怖じしてしまう子もいたのですが、今回はどんどん話しかけていましたから。人とのコミュニケーションに対する子どもの心理的ハードルが下がったのだろうと思います。
美里工業高校とは、これ1回でおしまいにならないよう、今後も継続して関係性を築いていきたいと考えています。今回、「将来は保育士になりたい」という生徒さんがいらっしゃったのですが、そうした子も含めて、授業の一環でもボランティアでもいいのでまた遊びに来てもらいたいですね。子どもたちに木工を教えてもらうなど、何かできたらなと思います。
後日談:4、5歳児が美里工業高校を訪問
インタビューの翌日、4、5歳児が美里工業高校を訪問しました。園から高校までは、片道3km。歩いておよそ1時間30分の道のりです。朝9時に出て、10時半に到着。元気いっぱいに到着した姿を見て、出迎えてくださった高校の先生方は「本当に歩いてきたのですね」と驚かれていたのだとか。今回の取り組みに携わった先生だけではなく、どろんこ保育園の活動に興味を抱いてくれた先生お二人もご挨拶に出てきてくださいました。
工業高校ならではの授業を見学させてもらい、子どもたちは興味津々。マイナス27度の冷凍庫に入る体験では、「さむーい」「涼しくてサイコー」と大はしゃぎ。怖くて中には入らなかった子どもも含め、楽しい体験となりました。
「今回のご縁を1回で終わらせず、今後も末永く美里工業高校との交流を続けていきたい」と語ってくれた岩田園長。高校を始め、今後も地域交流、貢献の機会を作れるよう働きかけていくそうです。
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