こどもぴあ保育園 神戸の「一粒の種から広がっていく体験」
2020.04.23
2019年4月に開園した「こどもぴあ保育園 神戸」(兵庫県神戸市)は、どろんこ会グループが関西グリコ株式会社様の「グリコピア神戸(神戸ファクトリー)」の敷地内で受託運営する事業所内保育所です。開園1年目から「一粒の種から広がっていく体験」を大切にした保育を目標に掲げ、畑仕事から始まる様々な体験活動に取り組んできました。1年間の取り組みの様子について、西川園長のお話をお伝えします。
小豆から広がった体験活動
私たち保育者は、開園前にみんなで1年間の事業計画を考える時、「一粒の種から広がっていく体験」を軸にした保育にしようと話し合いました。その1つが小豆でした。4月に子どもたちと小豆を植えて育て、収穫後はあんこにしておはぎ作り、勤労感謝の日に「ありがとうの会」を開催して、そのおはぎを「グリコピア神戸」の社員のみなさんと、保護者のみなさんに召し上がっていただく計画を立てました。
収穫を通して数、大きさ、色の違いに気づく子どもたち
春に植えた小豆が秋になると、さやがだんだん茶色になってきます。さやにはいくつか小豆が入っています。子どもたちが手でさやをむいて収穫する時、小豆が7つ入っているさやであれば、保育者が「7人家族だね」と言葉をかけると、「これは3つだから3人家族だね」と会話が弾むようになり、子どもたちはさやによって数や大きさが違うことに気づいていきました。
1歳児の子も、とても上手にさやをむいていました。子どもたちはさやをむくことが楽しくて、楽しくてたまらない様子で、ある時、まだ緑色のさやも獲ってむこうとしたことがありました。「あ、それはまだなんだけどな…」と思いながらもそのまま様子を見ることに。すると、入っていた豆の色がほんのりピンクだったんです。子どもたちは「あ、色が違う」と気づきました。緑、黄色、茶色とさやの色が変わっていく段階で、中に入っている豆の色も違うことに、子どもたちは体験を通して気づくことができました。
小豆から食育、たくさんの人との交流体験へつなげる
勤労感謝の日に合わせて、収穫した小豆をあんこにして作ったおはぎを、「グリコピア神戸」の社員のみなさんや保護者の方に召し上がっていただく「ありがとうの会」を開催しました。0歳児も小豆を洗って、あんづくりに参加。小豆を育て収穫する畑仕事、あんこにしておはぎを作る食育活動、おはぎを振る舞う「ありがとうの会」でたくさんの人との交流、子どもたちが育てた一粒の種が様々な体験へとつながっていきました。
お菓子工場と保育園とで、子どもたちの体験を豊かな経験に変えていく
事業所内保育所であるこどもぴあ保育園は、工業団地の中にあるので、ご近所に交流できる商店や住宅、他の保育園や幼稚園などがなく、地域とのかかわりを持つのが難しい環境です。でも、関西グリコさんの工場「グリコピア神戸」と隣接していることを活かした取り組みが、子どもたちの経験を豊かにした一年でした。
関西グリコさんは、お菓子「ビスコ」の製品にはできない割れたビスケットを豚の飼料に、チョコレート菓子に使うカカオ豆の殻を堆肥づくりに提供して食品資源の再利用に取り組まれています。その豚肉を園の給食の食材に提供していただいたり、秋にはその堆肥を畑仕事用にご用意いただいたりなど、食品資源の再利用が子どもたちの食育、畑仕事にもつながっていったのです。
カカオ豆の堆肥は、さっそく、かぶや大根、ほうれん草、チューリップなど、冬から春にかけての野菜とお花を育てるのに活用しました。カカオ豆の堆肥で育てた冬野菜を七草粥にした時は、図鑑で七草を調べました。これをきっかけに、子どもたちは図鑑が大好きになりました。
これからも様々な年齢の方と触れ合う場面を
2年目に入る2020年度は、小豆の栽培を続けつつ、4月の終わりに収穫できる玉ねぎを使った「手仕事」を考えています。玉ねぎの皮を使ってさらしを染めて、手ぬぐいを作ります。敬老の日に、おじいちゃんおばあちゃんをお招きしてプレゼントし、昔遊びを教えていただく交流を計画しています。保護者以外の様々な年齢の方と触れ合う場面をたくさん作る予定です。引き続き、一粒の種から様々な体験や表現活動へとつながる保育に取り組んでいきたいと思っています。
「持続可能な社会づくり」へ 食品リサイクルループの輪を保育園の食育に繋げる
こどもぴあ保育園の食育や畑仕事へのご協力のきっかけについて、関西グリコ株式会社神戸ファクトリーの澤田さんにもお話を伺いました。
「関西グリコ株式会社は、食品製造会社であるため、食品を製造する過程において、カカオ豆の殻や割れたビスケットなどの食品ロスが必ず発生してしまいます。まず、製造過程のロスの削減が大切で、ロスを減らす取り組みを行っていますが、次に出たロスをゴミとして廃棄するのではなく、いかにリサイクルするか考えた結果、養豚の飼料や堆肥に利用する取り組みをはじめました。『食育を掲げるどろんこ会と実際に食品を扱う関西グリコの企業内保育園だからこそ、独自でできることはないか』と以前より考えていたこともあり、このリサイクルループの輪を保育園にも広げ、子どもたちの食育にも繋げたいと思ったのです。」
食品リサイクルループの輪を保育園の食育や畑仕事に広げていただくことは、食の循環を知ることや体験を通した乳幼児期の環境教育にもつながります。これからもこどもぴあ保育園は、「グリコピア神戸」のみなさんと共に、子どもたちの「自然を大切にする気持ち」を大事に育み、大人になった時の「持続可能な社会づくり」の意識の土台をつくっていきたいと思います。