2021年4月開園予定!「雑木林保育」のできる(仮称)守谷どろんこ保育園
2020.06.11
2021年4月に、茨城県内4つ目のどろんこ保育園、「(仮称)守谷どろんこ保育園」(茨城県守谷市)が開園します。本格的に工事が始まるのは今年の8月。一体どんな保育園になるのでしょうか。今回は、同園の設計を手掛けるユニップデザイン株式会社代表であり一級建築士の房前寿明さんに特徴や環境、設計に込めた想いについてインタビューしました。
自然豊かな土地の特徴を生かした設計に
――(仮称)守谷どろんこ保育園の建設予定地はどのような土地、環境なのでしょうか。
今回の場所は4,700平米を超えるかなり広大な土地です。現在、そのほぼ全域に木が生い茂っています。多くはイチョウの木ですが、ケヤキやマツ、サカキ、クヌギなども生えています。敷地の北側と西側は道路に面しており、東側には大規模な和食店、南側には雑木林が広がっているエリアです。すぐ近くには守谷市役所がある守谷市の中心部ですが、「市街化調整区域」でもあります。比較的落ち着いた環境であるといえるでしょう。
――房前さんはこれまでもどろんこ会グループの保育園を数多く設計してこられましたが、今回はどのようなポイントを重視して設計されましたか?
毎回共通することでもありますが、「できるだけ敷地の特徴を生かした設計にしたい」と考えました。まずは建物の配置についてですが、東側にある飲食店は自然とは遠い無機質なものなので、なるべく見えないようバリケードのように駐車場と建物を配置して、残りの部分を園庭としました。
北側には地域の方をはじめ、どなたでも利用可能な地域子育て支援室「ちきんえっぐ」を配置しました。ここで地域の方たちと交流したり、気軽にコーヒーを飲んだりしていただけたら、と考えています。こちらの壁には道路側と園庭側どちらにも大きなガラス戸を設置して、外からも園庭からも中の様子が見え、さらに園庭で活動する子どもたちの様子も外から垣間見えるようにしました。天気のいい日はガラス戸を開放して「屋根があるだけ」の状態にできるような開口部を検討しています。
さらに、園庭側と道路側それぞれに芝生広場を設けて、子どもたちが気軽に遊べるようにしました。どろんこ会には「ちきんえっぐ」が併設された園が他にもありますが、芝生の裏庭付きはこの園が初となります。室内の床は気軽に出入りできるよう、土足のまま入れる土間にしていますが、子どもをちょっと寝かせたり遊ばせたりできる小上がりも作る計画です。
最近の打ち合わせで、どろんこ会から「保育室ではできないような創作活動ができる工作室のような部屋がほしい」というご要望をいただきました。例えば土足のまま創作活動をしたり、絵具などを大量に使って全身で絵を描いたりできるような部屋です。そこで、「ちきんえっぐ」の土間の続きに工作室も追加で計画しています。これもどろんこ保育園の設計では初めての試みです。
他にも、雨の日や真夏日でも活動できるような、屋根だけかかっている半屋外空間を土間の部分を積極的に取り込みながら計画しています。
今回の園舎設計で特徴的な点は、調理室を真ん中に設けたことです。スペース的にゆとりのあるこの園だからこそできる配置ですね。調理室に隣接する各保育室や縁側から、調理している様子をのぞくことができます。給食の時間を楽しみにしている子どもたちも多いと思いますので、調理師さんや栄養士さんたちとコミュニケーションが取れるようにと考えたのです。さらにそれぞれの保育室の可動式間仕切りを取っ払うことで、悪天候の日や冬場など、廊下を通らずに各保育室に給食を搬出入することができる動線も想定しました。
――他にも働くスタッフたちのための工夫があれば教えてください。
やはり働く上での動線ですね。例えば、各部屋からトイレへの行きやすさ、ちょっとした汚れものを洗って干せる洗濯場などバックヤードへの動線が使いやすいように配慮しました。また、玄関のすぐ隣に職員室を配置したのですが、その隣にスタッフがちょっと寛げるような休憩室を広めにとり、相談室や更衣室も隣接して設けました。すべての部屋に収納を設けて、各部屋で必要な物をすぐに取り出せるようにも計画しています。
――守谷どろんこ保育園ならではの工夫や新たな試みについて教えていただきましたが、設計する上でこの園に込めた想いを聞かせてください。
この土地には前述したように本格的な雑木林があって、真夏でも揺れる木漏れ日の中で鳥や虫に触れ合いながら活動できる、いわば 「雑木林保育」ができる環境が広がっています。なかなかこういう場所はありません。ですから、できるだけ今生えている木を残したいと考えました。その上で、保育室という屋内から縁側へ、そして屋根がついた半屋外の土足エリアへ、さらに芝生の園庭、そして雑木林の園庭という屋外へと、活動空間を多段階に分けつつも、各エリアを完全に分断せず、緩やかにつながるようにしたいと考えています。
木の高さは15メートル程もあって、かなり高い位置に葉っぱがありますから、子どもたちの目線では柱がいっぱい立っているような状況です。そのため、一部の屋根の上に展望テラスを設置して上からも雑木林を見られるようにすることも検討しています。野鳥や木葉を観察するなど、できるだけ自然に触れてもらいたいですから。
――最後に、今後の目標や想いについてお聞かせください。
先日、以前設計を手掛けた石川どろんこ保育園(沖縄県・うるま市)の園長先生が、「子どもたちが『ここがすごい気持ちいい!』と言ってエントランスホールによくいるんです」と教えてくれました。実際、風が通り抜けるように開口部を大きくしたり木を張っていたりする場所なので、子どもたちが「気持ちいい」と感じてくれていることを聞かされ、とても嬉しくなりましたね。
これからも天然素材のあるデザイン、安らぎのあるデザイン、自然環境のあるデザイン、安全性のあるデザイン、そして快適性のあるデザインという5つの要素を柱に、「子どもたちの記憶に残るデザイン」を目指して設計活動をしていきたいと思っています。
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