常に必要とされる「保育」の質向上を。理事長・代表インタビュー

2021.04.01

#その他

代表インタビュー 全施設

新型コロナウイルス感染症への対応を迫られた2020年度。どろんこ会グループにとっても、常に最新の情報にアンテナを張り、本社・現場が連携して保育に当たってきた1年でした。

大きな変化のあった年度を終えた今、2020年度をどう振り返るのか。そして、2021年度のどろんこ会グループが向かう先はどこなのか。安永理事長と高堀代表に聞きました。

安永理事長と高堀代表
ウィズコロナの2021年度を語る安永理事長(右)と高堀代表(左)

「今までやってきたことの意味」が可視化されたコロナ禍

――2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた1年間となりました。どろんこ会グループの2020年を振り返って、今感じていることについてお聞かせください。

衛生用品の梱包に勤しむ本部スタッフ
衛生用品の梱包に勤しむ本部スタッフ

安永理事長(以下、安永):先の見えない感染症の流行ということで、現場にとっては気を引き締め続けた1年だったと思います。その一方で、エッセンシャルワーカーという言葉が広く知られることになったように、保育はどのような状況でも必要とされる仕事だとあらためて認知された1年でもありました。社会が大きく揺れ動く中でも「冷静に、いつも通りにきちんと行動する」をあらためて意識した2020年度でした。

高堀代表(以下、高堀):衛生用品が一時的に市場から品薄になったため、各施設に支給する緊急補給品の手配に関しては苦労がありました。スタッフも未知のウイルスに不安を抱いていたと思いますが、実際現場で行った感染対策は、実は平時と同じだということに気づきました。

安永:消毒の負荷は確かに増えましたが、他の感染症の流行時期にも同じように徹底していることですからね。世界にとっては大きな変化でしたが、それに対応するために突然新しいことをやらなければならなくなったわけではなく、「普段行っている消毒をあらためてきちんとしましょう」という姿勢だったため、パニックにはならずに済んだのかもしれません。

――平時とは異なる対応、工夫も必要だったかと思います。いかがでしたか?

高堀代表
2020年度を振り返る高堀代表

安永:緊急時における意志決定や対応については、22年間の蓄積を生かせた感覚があります。法人として組織的にスピーディーに動くことができたのではと感じています。

高堀:スタッフのITリテラシーが向上したと感じています。必然的にZoom会議やオンライン研修をすることになったため、これまで不慣れだったスタッフの心理的ハードルが引き下がったのではないでしょうか。

安永:どろんこ会グループでは以前からITの活用に力を入れてきました。同業他社と比較してもIT活用への注力度は高いと思っています。元より、2020年度内にパート・アルバイトを含む全スタッフにスマホを貸与する予定にしていたんです。導入した6月以降は、コロナに関する法人としての対応方針やスタッフの体調不良情報の伝達がよりスムーズに行えるようになりました。

オンラインでのプレゼンテーション力が向上
あらゆる会議やプレゼンテーションをオンラインに切り替えて行った

例年、全国各地で年120回以上のペースで開催してきた子育てスキル講座も、2020年度はすぐZoomに切り替え、オンラインで開催し続けることができました。若手のスタッフから園長まで、みんなが意見を出し合い質問をしている様子が見られ、自分たちで教え合う関係がより深まったと感じました。嬉しかったですね。

高堀:会議のために本社に来ることがなくなったため、削減された移動時間分、子どもを見る時間に充てられたのではないかとも感じています。

安永:本社と言えば、今まで本社で行っていた「子育て探究費」(どろんこ会グループ独自の保育現場における活動費助成制度)のプレゼンテーションもZoom開催にしたのですが、パワーポイントを使っての資料作成スキルや、オンライン上の相手にきちんと伝えるコミュニケーション能力など、ビジネスパーソンとして必要とされる力をスタッフが身につけるきっかけになったのではないかと感じました。ビジネスパーソンである保護者の方に子どもの成長を伝える力は、今後ますます必要です。伝える力を磨く必要性を身をもって体感してもらえたのではないでしょうか。

原点を忘れない大切さと新たな挑戦への貪欲さ

――全職員が参加した2020年度の全体研修で、「保育の品質で選ばれるようになる」とのお話がありました。ここでお伝えされた「一人ひとりが毎日をよく生きること。自分ができることを探し、懸命に生きること」「本部は現場、現場は本部に感謝と敬意を忘れないこと」「社会を生きる大人の一人として保育以外の必要なことも学ぶこと」に込めた思いについて、あらためてお聞かせください。

安永理事長
創業からの一貫した思いを語る安永理事長

安永:保育現場は止まることがありません。見方によれば、常に忙しい仕事であり、ふと「大変」「しんどい」などネガティブな言葉を発してしまいそうになることもあるでしょう。ただ、子どもたちに背中を見せる仕事である以上、私たちはにんげん力高く生きていかなければならないと思っています。「大変、できない」ではなく「どうしたらできるだろう」という思考を持って働ける人であってほしい。そのためには、自ら大変そうに見えることを買って出られる人であり続けなければならないと思っています。

40歳を過ぎて知ったことですが、リーダーシップは後天的に身につけられる能力であり、誰しも初めは持っていないのだそうです。経験を積めば積むほど、人の気持ちを想像できるようになり、リーダーのスキルが身につく。現場には園長や主任といった肩書もありますが、肩書関係なく一人ひとりが周りの人、子どもたちがついてきてくれる人であってほしいですね。その想いを伝えたいと思い、全体研修で語る言葉として選びました。

ただ、すべてずっと言い続けてきた言葉でもあります。保育の仕事は外部に営業に行ったりすることはなく、言わば狭い世界になりがちです。そのため、常に言語化して言い聞かせていないと、原点を忘れてしまいます。私自身も含め、意識的に繰り返し伝えていきたいですね。

――2021年度のどろんこ会グループについて、今のお考えをお聞かせください。

鶏の解体作業
食の循環を身をもって体験する子どもたち

安永:先ほどZoom上でキャリア年齢関係なく教え合う関係ができてきたと話したように、ここ7、8年、自分たちの成長機会に対して「与えてもらうのを待つ」のではなく「自分たちで場を作ろう」という風土ができあがってきたと感じています。このどろんこ会グループの強みを生かして、業界全体を巻き込んだ学びのシェアを広げていきたいです。

保育に関しては、食や環境における循環を子どもたちが知っていく取り組みをより一層進めていきたいと思っています。

高堀:「魚は切り身で泳いでいない」といったことを実体験で知ったり、残食をたい肥化して畑に活用したりといった食育は、園単位ではこれまでも行ってきましたね。

安永:はい。今は環境マネジメントのISO取得を目指しています。一方で、農業生産法人を別に立ち上げ、農業に挑戦するという大規模な計画も立てています。ゆくゆくは有機野菜で給食をまかなったり、障害者の就労支援につなげたりすることを考えています。

高堀:社としてはバックオフィスのシステムの精度をさらに高めていきたいと考えています。現場のスタッフが能動的に働ける環境を整えたいですね。これまでの20年間は、本社が仕組みを作り、現場にはそのマニュアルを守ってもらう中央集権型になりがちでしたが、今後は現場が主体となる地方分権を進めていこうとしています。各施設の特色を出して運営できる仕組みを作っていきたいです。能動的なスタッフが集まり、社会に影響を与えていけるグループになっていければと思っています。

――現場のスタッフやこれから保育士を志す方にメッセージをお願いします。

ただ見ているだけではない、真の意味で見守る保育を。
ただ見ているだけではない、真の意味で見守る保育を。

高堀:どの施設も、グループの理念に沿って一生懸命取り組んでいることが現場に行くたびに伝わってきます。法人が目指すインクルーシブ保育といった難しいことにも全力で向き合ってくれていることには感謝しかありません。私も2020年度はコロナの影響で現場に行くことがなかなか叶わなかったのですが、2021年度は状況を見ながら足を運びたいです。やる気を持って働いてくれているスタッフが生き生き働ける環境作りにこれからも取り組んでいきたいと思っています。

安永:「見守る保育をしましょう」という言葉をよく耳にしますが、文字通りただ横で見守ってさえいればいいわけではありません。保育士や保育士を目指している方に伝えたいのは、自分が子どものどんな瞬間を見守りたいのか、常に考えていてほしいということ。そして、その瞬間を見守るためには、どういった環境が必要なのかを考えてほしい。それが保育士の立てる保育計画であり、週案です。何もしないと感動の瞬間は味わえません。働き始めると立ち止まるきっかけはなかなかないと思いますので、ぜひこれを機に現役保育士の皆さんにも考えていただきたいと思います。

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