子どもの創造力がスパーク メリー★ポピンズ 稲城ルームの「いなぎっこ展」

2021.05.06

#保育

メリー★ポピンズ 稲城ルーム 生活発表会

どろんこ会グループの多くの施設で、毎年2月に子どもたちの成長を発表する場として生活発表会を開催しています。しかし、2020年度はコロナ禍において密を避けながらいかに実施するかが課題となりました。 メリー★ポピンズ 稲城ルーム本園と分園(東京都稲城市)ではこの課題を乗り越えるため、地元の豊かな自然環境を生かした表現活動の合同発表会を企画、その名も「いなぎっこ展」を地元の妙見寺にて開催することにしました。どろんこ会グループが設ける子育て探究費(詳しくは関連記事参照)を活用した、両園にとって初めての試みです。

「いなぎっこ展」のねらいや当日の様子について本澤施設長と、取り組みを主導した保育士の品田さん、黛さんにお話をお聞きしました。

いなぎっこ展の会場となった妙見寺
いなぎっこ展の会場となった妙見寺

稲城の恵まれた自然を保育に生かす

――「いなぎっこ展」は子育て探究費を活用して開催されました。取得の背景についてお聞かせください。

本澤:稲城ルームは駅近にありながら豊かな自然に恵まれた立地にある施設なのに、その環境を十分に生かしきれていないと思っていました。また、子どもたちの表現活動についても、「絵を描こう」と誘っても「苦手」と尻込みしてしまう子が多いことにもったいなさを感じていました。

品田:これまでも近くの里山に遊びに行ってはいましたが、崖登りをして泥だらけで帰ってくるくらいで、遊びの発展が不十分だと感じてはいました。自然が壮大な分、もっといろいろなことができるはずだと思いながらも、どう発展させればいいのかわからなかったんです。

黛:私も品田さんと同様です。ただ遊びに連れていくだけ、花を摘むだけで終わってしまうなど、楽しいけれど環境を生かしきれていない想いがありました。「遊びを発展させたい」と「安全面」をどう両立させていくのか、職員同士での価値観の共有も難しく、悩んでいました。

本澤:そこで、自然環境を使った表現活動をしてみたい。できれば、その道の専門家をお呼びして、職員にとっても学びのある機会にしたい。その費用に充てるため、子育て探究費取得に応募してみようと思い立ちました。

――外部の専門家から教わるアイデアは、どこからきたものなのでしょうか。

本澤:当初は、イタリアが発祥で世界で行われているレッジョ・エミリア・アプローチの、アトリエリスタ(芸術活動をサポートする専門家)を招いて子どもたちを導く活動をイメージしていました。予算や時間、コロナ禍という制約の中で、二人の専門家にご協力いただけることになり、2種類の体験の場を設けることにしました。

一つ目は白梅学園短期大学保育科の花原幹夫教授から造形表現を学ぶ機会。もう一つはプロナチュラリスト佐々木洋さんによる親子自然観察会です。

花原先生には、職員向けの研修会も開いていただきました。研修会は稲城ルームの職員だけではなく、西東京エリアのどろんこ保育園職員にも開き、オンライン参加も受け付けました。

プロナチュラリスト佐々木さんが稲城の自然を解説
プロナチュラリスト佐々木さんが稲城の自然を解説

外部の専門家と子どもたちとのやり取りは、見ている職員の学びにも

――花原先生、佐々木さんを迎えての取り組み、いかがでしたか。

本澤:本園に通う4、5歳の子どもたちが花原先生の自然物を使ったワークショップでコラージュに挑戦しました。子どもの創造力がスパークする瞬間を目の当たりにして、あらためて子どもたちのすごさを実感しました。

黛:私は子どもたちがコラージュ用の素材を探しに行くのに、妙見寺に同行しました。ふだん遊びに行くときには走り抜けていってしまう場所を、一歩一歩踏みしめるようにして歩いていく様子が印象的でしたね。見つけたものを花原先生にうれしそうに見せたり、じっくり葉っぱを見つめたり、「みかんの匂いだ!」と匂いをかいだり。新しい発見を楽しんでいました。その後制作したコラージュでは、同じものが一つとしてできないんです。「これが個性なんだな」と思いました。

似たような葉っぱを使っても、出来上がる作品はさまざま
似たような葉っぱを使っても、出来上がる作品はさまざま

黛:花原先生と子どもとのやり取りを見ていて、もっとふだんのやり取りから子どもの持っているものを引き出したいと思いました。これまでの私は、子どもたちの「これあったよ!」に「そうだね」と返すところまでで終わっていたんです。花原先生は、子どもの「面白い!」を受け止めて一緒に盛り上がっている様子が印象的で、私の学びになりました。

作品が出来上がるまでの過程を丁寧に記録し、作品に添えた
作品が出来上がるまでの過程を丁寧に記録し、作品に添えた

本澤:コラージュは、作品と一緒に出来上がるまでのプロセスも写真付きで展示して、子どもたち一人ひとりが何をどう選んで作っていったのかが保護者の方に伝わるように工夫しました。保護者の方からは、「制作過程の様子が手に取るように伝わってきました」とご感想をいただいています。

子どもたちが、もっと創造力をスパークさせられる保育を

――今後、「いなぎっこ展」での経験をどう生かしていきたいかについてお聞かせください。

品田:分園の子どもたちは0~2歳と、まだ自然遊びをそこまで大きく発展させられない年齢です。ただ、0~2歳の子どもたちならではの発見があることが、今回の取り組みでよくわかりました。これまでは、自然遊びをさせたくても、私に知識がないためについ「危ないから置いておいてね」と言ってしまっていたのですが、これからは「大丈夫」と確信できるようになったものに関しては、子どもたちの興味関心を尊重して接していきたいと思っています。作品展の準備は大変でしたが、同時にとても楽しかったですね。来年度もぜひ取り組みたいです。

黛:保護者の方が「いつもこうやって遊んでるんだね」とお話しながら子どもたちの様子を見ていたのが印象的でした。作品のプロセスもじっくり読んでくださった方が多く、「子どもの様子がわかってありがたいです」「素敵ですね」と言っていただけてうれしかったですね。

コラージュを終えてみて、これまでは私の中に「こうしてあげたい」想いがあったなと気づかされました。「してあげる」のではなく、子どもたちが持っているものを「引き出す」保育を目指していきたいです。

制作過程を知ることで、完成作品を見る目線も変わる
制作過程を知ることで、完成作品を見る目線も変わる

本澤:今回の子育て探究費の予算内で、2021年5月ごろに職員向けのナイトハイクも企画しています。まずは職員が自然を大好きになり、知識を身につけてほしいと思っての企画です。子どもが楽しむためには、まず大人が楽しむことが大切です。親子自然観察会も、保護者の方が楽しんでくれたからこそ、良い会になったと思っています。職員たちには、本取り組みでの経験を引き出しの一つにしてもらい、ふだんの保育に生かしてほしいですね。まだまだ子どもたちのスパークが見られると信じています。今後が楽しみです。

関連リンク

メリー★ポピンズ 稲城ルーム

メリー★ポピンズ 稲城ルーム分園

保育者の探究心を支える「子育て探究費」制度

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