どろんこ会のシンボル「ヤギ」vol2. 鶴見どろんこ保育園「プリン」編
2022.01.27
どろんこ会グループの保育園には、ヤギを飼育している園があります。2021年11月現在、北は仙台から南は沖縄まで、42頭のヤギが暮らしています。
そのうちのひとつ、鶴見どろんこ保育園(神奈川県横浜市)では「移動動物園」と称し、同じく横浜市鶴見区にある馬場どろんこ保育園にヤギや鶏を連れていき、馬場どろんこ保育園の子どもたちの体験活動、そして地域交流に生かしています。
ヤギを飼っていない保育園でも命の大切さに触れる直接体験を
この移動動物園を思いついたのは、鶴見どろんこ保育園の施設長を務める宮入さん。以前、ヤギを飼っていない園に在籍していた際に、子どもたちと生き物とのふれあいの難しさを感じていたと言います。「当初は動物を飼っていない近隣の系列園の子どもたちや地域の方にも来ていただき、ヤギや鶏、虫が暮らす『どろんこサンクチュアリ』を園庭につくり、気軽に生き物と触れ合える牧場のような雰囲気のオープンな場所にしたいと考えていました。ところがコロナ禍で交流や行事は中止となりました。ならば、外へ連れ出せばよいのではと考えたのです」と話します。そこで今年からヤギのいない馬場どろんこ保育園に出かけることにしました。
出張するのはプリン。2019年、鶴見どろんこ生まれの日本ザーネン種です。
「当初は外に出ると車を怖がったりもしました。そして一番大変なのは掃除です。ヤギの排便は量も回数も多いので、掃除道具を一式持参して向かっています」と宮入さん。
ヤギだけでなく鶏も籠に入れて背負い、約1時間の道のりを歩いて向かいます。迎えに行った馬場どろんこ保育園施設長の田中さんは「最初にこの活動について聞いた時、子どもが動物とふれあい、喜ぶ姿が見られると思うとうれしく、ありがたいと思いました。また、馬場どろんこ保育園では園庭開放を定期的に実施しているのですが、コロナ禍で交流が難しい状況にありました。ところが、2回目にこの移動動物園を実施した時には、口コミもあり、多くの地域の方が来てくださいました。通りがかりの方も入ってくださり、地域交流のきっかけになりました」と話します。
馬場どろんこ保育園の子どもたちには事前にプリンの好きな食べ物や苦手な食べ物、ふれあい方などを伝え、「ヤギが来るんだ!」という期待感を高めていきました。
そしていざ、プリンが来ると喜ぶ子どももいれば、怖がる子どももいて、反応はさまざま。ただ、後日保護者の方から「子どもから『ヤギに餌をあげたよ、いっぱい食べてくれたよ』とうれしそうに話してくれました」とお話をいただき、この取り組みについては好評をいただいているとのことです。
2人の施設長にどろんこ会の保育におけるヤギの役割についても伺ってみました。
田中さんは「絵本やテレビでヤギを見る機会はあるかもしれませんが、直接体験に勝るものはないと思います。野菜を食べてくれたといううれしい思いであったり、頭突きをされてしまう怖さも、すべてをひっくるめてどろんこ会グループが大切にしている直接体験につながると感じています。生き物を愛おしく思うこと、世話をすることを通じて、命の大切さを感じる心を育んでいけたらと思います」
宮入さんは「生き物との関わりを通して、人間とは違う種であるということを知り、その違いを受け止めてもらいたいと思っています。ヤギであれば、良いところばかり見るのではなく、頭突きもするし、角は危険でもある。それを悪いこととするのではなく、適正な距離感をもって共存していくということを学ぶことにつながっていくとよいのではと思います」
自ら外に出かけることで子どもたちに命にふれあう直接体験の機会を設ける大切な存在のヤギ。こうした工夫とアイデアで、グループ内でヤギを飼えない施設でも触れ合える機会を創り出しています。