どろんこパーソンに迫る!vol.1 前原どろんこ保育園の東恩納さん
2022.02.24
どろんこ会グループの子育て理念である「にんげん力。育てます。」
子どもにその力を育むためには、保育に携わるすべての大人こそが「にんげん力」をもっていなければなりません。
どろんこ会グループは全国約140箇所の施設を運営し、スタッフの数は約2000人に及びます。多彩なバックグラウンドをもつ一人ひとりが、さまざまな人生経験を糧に、その背中を子どもたちに見せながら、子育てに取り組んでいます。
本連載ではそんな「どろんこパーソン」一人ひとりのストーリーをお伝えしたいと思います。
第1回は、前原どろんこ保育園(沖縄県うるま市)でパートタイムで働く東恩納さんのストーリーです。
「どろんこ」に惹かれて 定年後再び保育の道へ
東恩納という名字から、てっきり沖縄出身かと思いきや、熊本県出身の東恩納さん。昭和26年、畳の原料となるいぐさの栽培地として知られる八代地方に生まれました。
ご両親はいぐさ農家を営み、真冬のいぐさの苗植え、夏は収穫と天日干し、そのいぐさを自動織機で加工していく、畳が出来上がるまでの一年と共にあった子ども時代と言います。
「暑い夏には父がアイスキャンディを買ってくれ、冬には家族で餅つきしてあんこ餅を楽しみました」そんな素朴で幸せな思い出が東恩納さんの原点です。
高校卒業後は大阪で社会人となり、ホテルのキャッシャーとして勤務。結婚してすぐには子どもに恵まれなかったところ、祖母の勧めで保育園でのアルバイトを始めたのが保育の仕事との出合いでした。ここで持ち前のバイタリティを発揮し、一念発起して保育士の資格を取得。新規開園する保育園で正職員として勤めることとなりました。
その後、家庭の事情で沖縄県うるま市に移住することに。同時に60歳を迎え定年と考え、保育士を引退しました。ハローワークに行ったところ求職活動の一環として介護の勉強を始め、なんと介護福祉士の資格も取得。年齢を重ね、環境が変わっても、前向きで学ぶ意欲はますます旺盛になった東恩納さん。そしていざ介護の道に進んでみたものの、「やっぱり保育がいいな」と思ったと言います。
再び保育の仕事に戻るべく前原どろんこ保育園の求人に応募したところ、採用となりました。当時、実はどろんこ会グループのことは全く知らなかったそうで、「どろんこという名前に『これは何かある』と思いました」と、予感めいたものがあったのかもしれません。
東恩納さんを呼び戻した保育の魅力とは何だったのでしょうか?
「子どもたちの人格形成の時期に生きる力を育めることは、保育の仕事の魅力だと思います。その後、どのように羽ばたいていくのか、子どもにとってとても大事な時期に関わり、日々の成長を目の当たりにすることができます。それでお給料もいただけるとは、なんていい仕事なんだろうとあらためて思いました」と破顔一笑。
チーム保育に一役買う高いコミュニケーション力
「毎月1回、離れて暮らす娘に手紙を書いているんです。どろんこ会の求人に応募すると書いたら、『まさか受かるわけがない』と言われて。それが無事働けることになったので、電動自転車をプレゼントしてくれました」とうれしそうに話します。
当初はパートタイムとして、正職員のサポートをする黒子的存在に徹するつもりだったという東恩納さん。ですが、持ち前のコミュニケーション力を発揮し、前原どろんこ保育園のムードメーカー的な存在となっていきます。
自身の強みを「常に壁をつくらないよう、誰とでもコミュニケーションをとる力」と言うように、職場にも家で採れたシークワーサーでつくったゼリーを差し入れるなど、気くばりを欠かしません。保育はチームで行うからこそ、とても重要な力です。
東恩納さんのこの力は、地域社会でも発揮されていました。
「沖縄に来て驚いたのは、『この人は誰?』と二度見をされること。大阪だと誰が通ろうが全然気にしないのですが、ここでは皆がお互いを知っているからなのだと思います。でも、公民館や生涯学習センターにも積極的に通って、ついには親しみを込めて下の名前で呼んでもらえるようになりました。今はそこでパン作りにはまっているんです」と、その口ぶりから沖縄での暮らしが充実していることが伝わってきます。
また、保育園の近くに暮らし、地域に溶け込んだからこその提案もしています。
どろんこ会グループは地域交流を大事にしていますが、ただ力をお借りして関わっていただくのではなく、地域に受け入れていただくためにも私たちも地域に貢献し、恩返しをしていく必要がある、と東恩納さんは強調します。「だからこそ、園周辺や散歩で歩く道の清掃活動を提案しました。例えば、散歩の途中に草花を摘んで遊んだあと、それを散らかしっぱなしではなく、せめて咲いていた元の位置に戻すなどの配慮は必要です。海岸のごみを拾って、掃除をすることも同じです。保育園に対する地域の方々の思いはさまざまだと思います。せっかくよい保育をしているのですから、『ただ暑い中散歩をさせている保育園』というイメージだけになってしまわないよう、地域に受け入れられる保育園になれればと思っています」
本物に触れる体験を大事に
前原どろんこ保育園の保育で印象に残っていることを尋ねると、「青梅の季節の手仕事です」と。
どろんこ会グループでは毎年、安永理事長と高堀代表をはじめ、有志のスタッフが、茨城県で梅を収穫し、全国の園に発送しています。「子どもたちと青梅と氷砂糖を漬け込んで、梅シロップが出来上がると、沖縄では本格的な夏を迎えます。散歩から帰って水分補給する時、梅ジュースだと分かると子どもたちはさっと集まり、『おいしい』『おかわりちょうだい』とあっという間に飲み干します。どろんこの子どもたちは本物の梅ジュースの味を体験でき、幸せです」とほほ笑みます。
「そうそう、散歩と言えば」と東恩納さんは続けます。「今日、通勤途中に遠くから『先生、先生』と連呼されて、誰かと思えば卒園児がわざわざ挨拶をしに駆け寄ってくれたのです。沖縄は車社会なので、多くのご家庭が車で通勤がてら子どもを小学校に送るのですが、長距離散歩で足腰を鍛えられた卒園児がしっかり徒歩通学をしていたことがうれしくて。園に着いて思わず皆さんにこのエピソードを共有し、どろんこの保育は正解ですよ、と伝えました」とうれしそうに話します。
東恩納さんは今、自然いっぱいのうるまでの保育を心から楽しいと言います。保育室から聞こえてくる三線や沖縄民謡。サトウキビ畑を散歩し、アセロラの木の下で水分補給・・・沖縄ならではの風景です。
最後、前原どろんこ保育園でこれから挑戦してみたいことを尋ねると、
「地域の高齢の方と昔ながらのおやつを作ったり、昔遊びを教えてもらったり、異世代交流を進めたいですね。また、焚き火で焼き芋やマシュマロを焼いたり、ほこっとできる時間をつくることができれば。これからを生きていく子どもたちが社会性を身につけられるよう、背中を見せていきたいと思います」と語りました。
人生を積み重ねただけ「にんげん力」が増す。東恩納さんはそれを体現しているように思います。どろんこ会グループ南端の保育園には、こんな魅力的な人が活躍しています。
次回も全国で活躍する魅力的などろんこパーソンの人となりをご紹介していきます。