P’sスマイル保育園と武蔵台わんぱく保育園に聞く 長距離散歩の楽しみ
2022.03.03
どろんこ会グループが子どもたちに育みたい6つの力のうちの一つ、「ケガをしない強い体を育てる」。そのために日々の保育に取り入れているのが「長距離散歩」です。
長距離散歩といっても、子どもたちは一体どのくらい歩くのでしょうか。
今回はP’sスマイル保育園(神奈川県横浜市)と武蔵台わんぱく保育園(埼玉県日高市)の長距離散歩についてご紹介します。
どろんこ会グループの保育園の散歩の目的
どろんこ会グループが考える散歩の目的は次の3つです。
- 自分の足で歩く。
- 発達に合わせて歩行機能・身体機能を伸ばす。
- 挨拶や人との触れ合い、目に入る景色から季節を感じ、興味・関心を引き出す。
また、毎日一定量以上の太陽光を目から取り入れることで、体内時計が整えられ、気持ちや体調の安定に深い関わりがあるセロトニンというホルモンの分泌が促されることが分かっています。そのため、午前中は目いっぱい太陽の光を浴びて体を動かすことができるよう、そのあとはお腹いっぱい昼食を食べて休息し、午後の活動につなげていけるよう、長距離散歩を実施しているのです。
距離を徐々に伸ばしていくP’sスマイル保育園の散歩
P’sスマイル保育園は、JR鶴見駅直結の駅ビル「シァル鶴見」内にある認可保育園です。園庭はビルの屋上の小さなスペースとなり、そこではプランターでの野菜栽培などを行ってはいるものの、園周辺だけでは自然と触れ合うのはなかなか難しい環境にあります。
「でも、歩くことでたくさんの自然を発見できます」と長距離散歩に力を入れている保育士の森田さんは言います。 P’sスマイル保育園では、年齢や子どもの様子に応じて、目標に定めた公園までどのように歩くか大きな見通しをもつことで、日々の達成感や充実感も感じてもらえるよう工夫しています。
例えば、ひえ組(1歳児)では散歩カートに乗らずに往復2.2kmを歩くこと、あずき組(2歳児)では年度末までに年上の子の誘導なく4.2kmを主体的に歩くことができるようになること、だいず組(3歳児)は往復7kmといったように具体的に目標を立てました。2月には皆その距離を見事達成、難なく長い距離を歩けるようになりました。
むぎ組(4歳児)、こめ組(5歳児)は園との往復で10km~13km、徒歩約1時間半かかる大師公園やみその公園までを歩くことができるようになったので、この3月に往復約10kmの夢見ヶ崎動物公園まで行くことを楽しみにしていると言います。
子どもの成長に多くのメリットがある長距離散歩
なぜ長距離散歩をするのか、P’sスマイル保育園のスタッフは実践する中で次のようなことに気づいたと言います。
- 足腰を鍛えることで、小学校の就学に向けてだけではなく、長期的に健康な体の基礎をつくることにつながる。
- 列をつくって歩くことで前の人との距離感を意識し、年上の子どもが年下の子どもに注意を促すようになるなど、協調性や社会性が身につく。
- 子どもたち自身が安全への関心をもつ。
- 午前中に体をたくさん動かすので、夕方は落ち着いて遊び込むことができ、1日の中で静と動の時間ができるようになった。
- 給食の食べる量が増え、だらだら食べないという習慣もつく。
P’sスマイル保育園施設長の松澤さんはこのように語りました。
「長距離散歩の魅力は目的をもって歩き、目的地で存分に遊べること、また、行動範囲を広げ、非日常を味わうことができることにあると思います。時には目的地の公園で体をたくさん動かして帰りに眠くなってしまったり、長い車道に飽きてしまい甘えて座り込んだりといったこともありますが、保育者の言葉がけや友達の励ましを受け、気持ちを切り替える姿が見られます。友達と励まし合うことは、どろんこ会グループが子育て目標に掲げる『人対人コミュニケーション』を身につけることにもつながり、体だけでなく心も育んでいる、つまり『にんげん力』を育むことそのものだと考えています。私は散歩を通じて自分の意志をもって自分の行動を広げていくことができる、そういう子どもが育つことをうれしく思っています」
0歳児も山登りに挑戦 武蔵台わんぱく保育園の散歩
武蔵台わんぱく保育園は、武蔵台病院にお勤めの方の0歳から2歳までのお子様を中心にお預かりする院内保育所です(※地域の方が利用できる枠もあります)。
近くを高麗川(こまがわ)が流れ、曼殊沙華の群生地としても知られる巾着田(きんちゃくだ)にも程近く、豊かな自然に恵まれた場所にあります。
武蔵台わんぱく保育園に園庭はありませんが、この豊かな自然を楽しめるとあって、毎日散歩に出かけていると言います。その距離なんと平均3km。万歩計で測ってみたら一万歩を超えたというから驚きです。
そういった日々の積み重ねの成果でしょう。つい最近、園の南側に位置する標高271mの多峰主山(とおのすやま)に0歳児が歩いて登ったということを聞きました。子どもたちは約50分間、山道を歩き切りました。
施設長の真邉さんは、「スタッフも全員戸外活動が大好きで、まさに自身の背中を子どもたちに見せる形で率先して散歩を楽しんでいます。散歩は歩くことが目的というよりは、歩くことそのものを楽しむことにあると考えています。そういった姿勢が子どもたちにも伝わっているのかもしれません。だからなのでしょうか、誰一人嫌がることなく、朝になると自然に散歩に出発しています。ちなみにまだ歩くことのできない0歳児もカートに乗って一緒に散歩に出ています。葉っぱの色やさまざまな種類の鳥など、自然を目にするだけでもすべてが発見で、そういった自然との出合いが五感を刺激していると感じています」と話します。
乳児を戸外に連れていくことにおいて、もちろん安全にも細心の注意を払う必要があります。
「命の危険に関わることは、ただダメというだけではなく丁寧に伝えることを大切にしています。とはいえ、子どもの行動は待ったなし、保育士の瞬時の判断力も問われます」と真邉さん。こういった保育のプロフェッショナルがいるからこそ、0歳児の山登りを可能にしたといえるでしょう。
次は園の北側にある日和田山への登山にも挑戦したいとのこと。標高305mとさらに高くなりますが、歩くことへの意欲あふれるスタッフと子どもたちなら実現できそうです。
駅前から住宅街を歩くP’sスマイル保育園と大自然を歩く武蔵台わんぱく保育園。対照的かもしれませんが、どちらも子どもたちに育みたい力は同じです。
これからもどろんこ会グループでは、どの施設でも子ども一人ひとりの成長に合わせ、安心・安全を徹底しながら、「最高品質の散歩」を実現していきます。