子どもたちの人生を豊かにする食育を 中里どろんこ保育園の五平餅作り
2022.06.02
中里どろんこ保育園(東京都清瀬市)では4月に食育活動の一環で五平餅作りを行いました。
中部地方の山間部発祥の郷土料理で、手軽なレシピとしても人気の五平餅。
食育活動に力を入れているという中里どろんこ保育園では、この五平餅作りに0歳児から5歳児まで全園児が参加できるようにと企画しました。
0歳児から5歳児まで参加した五平餅作り
企画したのは調理スタッフで栄養士の三井さんです。同じ清瀬市内にあるメリー★ポピンズ 清瀬ルームで行われた五平餅作りの活動の様子を聞き、自園でもぜひ実施したいと考えたと言います。
「せっかくなので0歳児から5歳児まで全員が関われるように、味噌は毎年子どもたちと一緒に作っているものを使って、焚き火であぶって香ばしい香りを感じながら外で味わうという体験をしてみたいと提案しました」と三井さんは話します。
そしてその企画を実行したのが保育士の千坂さんです。「中里どろんこ保育園に来る前は、グループ内の院内保育所で0歳児から2歳児の保育を担当していました。たとえ乳児であっても食育活動の様子を見せるだけで目を輝かせるというのをこれまでにもたくさん経験してきたので、ぜひ全年齢で実施して子どもたちの明日からの食の意欲につなげていければと思いました」と話します。
この日は午前中にこめ組(5歳児クラス)がお米をといで準備し、こめ組、むぎ組(4歳児クラス)が順番に交代で調理にあたりました。
登園時から五平餅作りを楽しみにしていた子どもたち。当日は雨天だったため、当初予定していた焚き火であぶることはかなわなかったのですが、期待に満ちた表情で部屋に集まり、真剣な表情で先生の説明に耳を傾けます。
炊いたお米をジッパー付きの袋に入れてつぶし、その後割りばしにくっつけて、フライパンで焼き色を付け、最後に味噌を塗って軽く焼いたら完成、とシンプルな工程です。
「米と味噌は必須食品です。それらで作られるものといえばご飯と味噌汁が定番ですが、少し手を加えればおやつにもなり、いつもとは違う食べ方を知ることができ、自分でも作ることができるということが、この五平餅作りを通して伝えることができれば」と千坂さん。
時間差でだいず組(3歳児)、あずき組(2歳児)ではお米をつぶすところから挑戦。
さらに午睡から目覚めたひえ組(1歳児)、あわ組(0歳児)もご飯の感触を体験しました。
炊きあがったご飯の熱さを触れて感じたり、香ばしい味噌の香りを実感したり、指先を使ってご飯をつぶしたりと、めいめいに楽しむ子どもたちを見て「五感を使うというのはまさにこういうことだなと思いました」と主任の斉藤さんもうれしそうに話します。「食べることは生きていくうえで一番大事な部分なので、食への興味関心は年齢問わず大切にしたいです。子どもたちが大きくなって、例えば海外に行った時でもその土地のものを味わいおいしいねと食べられることは、人生を豊かにしてくれると思います。今はその原点をつくる時期でもあると考えています」と斉藤さん。
千坂さんは「これまで一人親家庭や、保護者が夜勤で朝ごはんを一緒に食べる時間がない家庭、朝ごはんを食べてこないという子どもなどいろいろな家庭を見てきました。しかし、きちんと食べないと体調が整わなかったり、意欲が下がったりもします。そこでどんなに小さな子どもでも、一日を元気に過ごすために身近な食材で自分でも作れるんだ、ちょっとしたことで簡単に食べられるんだ、ということを実感する機会をつくり、調理や食べることへのハードルを下げたいと考えていました」と、今回の企画の背景に込めた思いも語りました。
日本の伝統食を子どもたち、保護者にも伝えていく
この企画を陰で支えていたのは調理スタッフで栄養士の新井さんです。
最初にこの企画について聞いた時のことを「中里どろんこでは0歳児からの食育を目指しているので素晴らしい計画だなと。食育は調理の力だけではできません。園全体で協力し、全力を尽くして取り組もうと思いました」と振り返ります。
ほぼ全クラスで子どものそばに寄り添って見守っていたりと、縦横無尽に活躍していた新井さん。当日の子どもたちの様子を見て「特に1歳児は普段食事の際に泣いてしまって集中力がない子どもも興味をもって、ご飯を触りながら、柔らかいな、食べられるのかな、と考えている様子が見られ、成長を感じました」と目を細めました。
「今回の五平餅しかり、梅干しやたくあん作り、味噌作りなど、日本の伝統文化を伝えることも食育計画に含めています。これらを保護者の方にも伝えていけたらと考えています」と新井さんが言うと、
千坂さんも「中里どろんこ保育園には外国にルーツをもつご家庭もいらっしゃるので、日本食以外の料理にも挑戦してみたいです。中には味噌汁が苦手という子どももいるので、そのご家庭では日ごろどのようなスープを食べているのか、どういうものなら喜んで楽しそうに食べてもらえるのかなど、保護者の方も一緒に食育に取り組んでいけたらと考えています」と今後の展望を語りました。