どろんこ会の給食を支える南魚沼生産組合を訪問 5月の米作りの現場をレポート
2022.06.30
どろんこ会グループでは、給食に提供するお米は自給自足を実現しています。
新潟県南魚沼市に2013年に「株式会社南魚沼生産組合」を設立し、田んぼを確保し、ライスセンターも建設。植え付けから収穫、精米、発送まで手がけています。
この株式会社南魚沼生産組合で今、どのような米作りを行っているのか、5月の田んぼの様子と共にご紹介します。
少数精鋭のスタッフが大事に育てた苗を植え付ける
田植え最盛期の5月下旬。繁忙期の合間を縫って株式会社南魚沼生産組合の取締役を務める外谷望さんが案内してくれました。
案内され、まず目に入ったのは田植えを待つずらりと並んだ苗。
4月から本格的に今年の米作りの準備を始め、土作り、種もみ(種となる米)の消毒や浸種(発芽に必要な水分を吸収させること)、出芽室(種から発芽させるために温度・湿度管理された小屋)の組み立てなどを行ってきました。
南魚沼生産組合では以前は苗の多くを農協から購入していましたが、3年前から自前で種もみから育て始めました。過去には出芽室にカビが発生してしまうなどさまざまなトラブルも経験しましたが、今年は順調にすくすくと苗が育っていました。
苗は品種別に並んでおり、コシヒカリを中心に、リスク分散も考慮しツキアカリという早生品種やアキダワラという晩生品種にも挑戦しています。
現在栽培面積は26ヘクタールに及び、田んぼは平地だけでなく山間の棚田にもあります。スタッフはエリアを分担しながらも5月は総出で田植えを行っています。
地域に貢献 中山間地域の農業を守る
この日は山間の棚田での田植えを行いました。まるで獣道のような山道をかき分けて進みます。
棚田での米作りはとにかく大変と言います。三方を山に囲まれているため日照時間が限られ、登熟(実に栄養が送られ大きくなること)しにくいというデメリットがあります。また、山は「とにかくカメムシが多い」と。カメムシが吸汁することで米粒の一部が変色するなどの被害が出てしまいます。さらに棚田の段差の草刈りも「斜度42度まで大丈夫というラジコン式の草刈り機を使ってみたもののなぜだか斜面から機械が転がり落ちてしまって」と苦笑する外谷さん。
このように作業には大変な苦労があるため中山間地域の棚田の担い手は激減しています。山地の多い日本では中山間地域は総土地面積の約7割を占めています。しかし、生産条件が不利なため新たな人材確保が難しい状況にあります。どろんこ会グループでは南魚沼市でこういった耕作放棄された田んぼを積極的に引き受けてきました。そのおかげかいろいろな方から面倒を見てほしいというお声をいただくようになり、耕作面積は来年には42ヘクタールまで増え、50ヘクタールを目指す予定でいます。
おいしいお米を子どもたちに届ける工夫
丹精込めて育てたお米は収穫後、ライスセンターに運ばれます。
ライスセンターはシンプルな建物ながら、米の品質を保つための機器整備も万全です。乾燥機で米の水分量が15%になるよう慎重に管理し、光選別機では1.9㎜に満たない粒や未熟なもの、虫などをはじき、徹底した品質管理を行ったうえで貯蔵しています。
劣化を防ぐために注文がきてから発送直前に精米することで、子どもたちにおいしいお米を届けています。
子どもたちに安心・安全なお米を届けるための挑戦は続く
今年の田植えは6月4日に無事終わりました。これからは草刈り、そして穂肥(ほごえ)が待っています。穂肥とはよい登熟のために実施する肥料散布のことですが、タイミングや散布量を間違えると茎や葉に栄養が回ってしまい、稲が伸びすぎて倒伏の原因になるといいます。米作りはまさに緻密な管理が必要なのです。
そして雨や台風、虫害、獣害・・・まさに自然との闘いです。
また、株式会社南魚沼生産組合では除草剤や農薬の使用を減らし、有機肥料を使用し、特別栽培米(農林水産省が定めている、地域の慣行レベルに対して対象農薬の使用回数および化学肥料のチッソ成分量がが50%以下で生産されたもの)とほぼ同じ条件で栽培しています。当然慣行農法よりも手間はかかりますが、子どもたちの食の安全を守りたいという想いが根底にあります。
さらに外谷さんは「昨年から一部の田んぼで有機肥料のみでの栽培に取り組んでみました。今年はさらにその面積を増やしています。有機栽培で生産されたお米はコンクールなどでも評価が高く、食味に影響すると考えています。私たちもさらにおいしいお米を作るためにいろいろ挑戦していきたいです」と意欲を語りました。
もともとは子どもたちの田植え・稲刈り体験や自然体験の機会を創ることから始まった南魚沼とのご縁。子どもたちの食育のみならず、地域の環境課題の解決や雇用創出などにつなげ、持続可能な地域社会に貢献したことが認められ、2020年には新潟県環境賞「エコの芽部門」の受賞に至りました。全国に広がるどろんこの子育てと共に、南魚沼の取り組みもさらなる発展を目指します。