園庭の棚田で子どもたちの五感を育む 万博公園どろんこ保育園の稲刈り
2022.09.22
実りの秋。茨城県つくば市にある万博公園どろんこ保育園では稲穂が黄金色に色づいていました。ここは「3メートルの高低差」のある園庭になんと「棚田」をもつ、他に類を見ない保育園です。9月上旬、子どもたちが稲刈りに臨みました。
お米のおいしさをあらためて実感できた稲刈り
2017年4月に開園した、定員90人の万博公園どろんこ保育園。今年度の5歳児は初めての入園児として卒園を迎えます。園庭の棚田は格好の遊び場でもあり、まさに棚田と共に育ってきた5歳児たち。今年は一つの田んぼ全てを任され、育苗から田植え、日ごろの世話にも積極的に関わってきたと言います。
スタッフは稲刈りを前に事前に研修を実施、試しに一つの田んぼの稲刈りからはざかけまでを実際に行ったので準備万端です。また、実家が稲作農家のスタッフや、自らも田んぼの世話をしていたというベテランスタッフもいるため、知識や経験を総動員していざ収穫です。
5歳児だけでなく、1歳児から4歳児まで、興味のある子どもたちは皆参加しました。
スタッフが稲穂の握り方、鎌の扱い方を説明すると、真剣に聞き入る子どもたち。
5歳児は自分たちが育てた一つの田んぼを次々に刈り取りました。「簡単だよ」と誇らしげな笑顔を見せて余裕です。
4歳児の田んぼでは、なかなか鎌で刈り取れない時には「がんばれ」の掛け声が響き渡りました。3歳児はここぞとばかりの集中力なのか、皆夢中で順番を待ち、あっという間に一つの田んぼを刈り終えました。
1歳児、2歳児は刈り取った稲を運ぶ係です。稲を受け取るとうれしそうに持っていき、何回も往復していた熱心な姿が印象的でした。
運ばれた稲をはざかけできるようまとめて結ぶのが長塚さんです。幼いころから田んぼが当たり前に身近にあったと言い、ものすごいスピードでてきぱきと稲穂をまとめ上げていきます。
そんな連携プレーが功を奏し、約1時間半で収穫を終えました。子どもたちに感想を聞くと「楽しかった」と。そして充実した気持ちのまま給食へ。「今日はいつもよりご飯がおいしかった」とうれしい言葉も聞こえてきました。
日本の原風景が子どもたちの日常に溶け込む万博公園どろんこ保育園
施設長の田中さんは「子どもたちは田んぼのことをよく見ています。春は田んぼに棲むおたまじゃくしやたがめを観察し、しばらくするとカエルとりを楽しみます。秋になればイナゴやトンボをつかまえて。田んぼと共に四季を感じ取っています。田んぼはいつも同じではない、日々何かがそこで起こっているので、それを五感で感じられるというとても恵まれた環境にあると思います」とうれしそうに話します。
「稲刈りが終われば、そこにレンゲソウを植えて土作りをします。そこではもみ殻を燃やして焼き芋をすることもあります。その灰は田んぼの土の養分となるのでそのまま返すことができるのです」と、循環型農業を実践。焼き芋のサツマイモも棚田の一部を畑にして育てているので自給自足です。
この日収穫したお米はおそらく園児全員分のおにぎりにできるとのこと。今年は豊作だったと言います。はざかけして天日で干し、水分がなくなるまでのお楽しみです。
田中さんは「私の祖母が石川県の輪島に暮らしていたので、幼いころに見た千枚田と重なって懐かしく思います」と、棚田を見て目を細めます。まさにそんな日本の原風景を彷彿させる万博公園どろんこ保育園の園庭。田んぼや畑、ヤギや鶏のいる風景が子どもたちの日常に溶け込んでいます。子どもたちはまさに自然と共に暮らし、自然の中で遊びを見つけていました。
田中さんは、このように素晴らしい環境の中で子どもたちにとってよりよい保育は何かを常に考え、先に進めることが幸せだと言います。万博公園どろんこ保育園では今日も棚田と共に子どもも大人も満ち足りた表情で過ごしています。
来年2023年4月には歩いて3分程度の場所に(仮称)香取台どろんこ保育園が新たにオープンします。ここは児童発達支援事業所、学童保育、放課後等デイサービスを一つ屋根の下に備える多機能型インクルーシブ施設となります。近隣に系列園ができることで園児同士や小学生との交流も楽しみです。
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