保育現場に向けた改正個人情報保護法研修を実施 IT化をいち早く進めたどろんこ会
2022.09.29
近年、保育業務を支援するさまざまなITサービスが登場しています。
どろんこ会グループには現場でのIT化を推進、サポートし、システムの運用からセキュリティ管理までを担当するIT企画部があります。
ITを使いこなし、より便利になることはもちろんよいことですが、保育園や児童発達支援施設では、大切な子どもたち、そしてその家族の個人情報を多く取り扱っています。
そこでどろんこ会グループではIT企画部が主体となり年に2回、全スタッフに情報セキュリティチェックを実施していますが、今年4月に個人情報保護法が改正されたのを機に、改正個人情報保護法研修を実施しました。
研修の講師を務めたIT企画部部長の石川さんに、そのねらいやどろんこ会グループが考える保育とITについてをインタビューしました。
より注意を要する個人情報を扱う保育園と児童発達支援施設
研修では、そもそも個人情報保護法とは何か、個人情報の種類、法律の目的と今回の改正のポイントを学んだうえで、理解度確認テストを実施しました。
石川さんは「個人情報保護法はもともと、常に改正していくという取り決めがなされています。今回はこの法律が常に更新されていることを知ってほしかったこと、また、さまざまな情報を扱う中で何が個人情報にあたるのかを正しく理解してもらうこと、さらに万が一漏洩や毀損が起きた場合、どのようなことが起こりうるのかを知ってもらいたかったのです。保育園や児童発達支援施設で扱う個人情報の中には、『要配慮個人情報』といった扱いにより注意が必要なものが含まれているということもあらためて認識してもらいたいと思っていました」と研修のねらいを話します。
「情報流出というと遠い所で起きるような話で、日ごろの保育においては意識しづらいかもしれません。ただ、デスクに写真や名簿を置いたまま離席していないか、換気のために窓を開けたら外からすぐに手が届いてしまうような場所に重要書類を置いていないかなど、身近なところに危険は潜んでいます。そういったことに各施設内で気づき、注意喚起を促せるようになるために、今回は特に書類仕事に接することの多い施設長や事務スタッフに受講対象を絞りました」と言います。
たとえ悪意がなかったとしても、情報が流出した場合の影響は計り知れません。どろんこ会グループでは2022年9月現在、約7000家庭にご利用いただいています。その大切な情報を危険にさらすわけにはいきません。また、過失を犯してしまったスタッフの人生も一変してしまいます。
「今、IT業界では『ゼロトラストセキュリティ』がトレンドです。つまり安全を守るなら信用しないことから始めるということ。保育業界では性善説に基づく考えで行動する方が多いと感じており、また周りのスタッフを疑うことは難しいとは思いますが、IT企画部としてはグループを守る使命があります。今回の研修もグループ、ひいてはスタッフ一人ひとりを守る取り組みであることを丁寧に伝えていきたいと思っています」とIT専門家としての強い決意を示しました。
保育業界でいち早くIT化に取り組んできたどろんこ会
どろんこ会グループでは2016年に保育園と利用家庭をつなぐ独自のアプリを導入しました。連絡帳の記入、日々の活動の様子をとらえた写真の共有、午睡時の呼吸確認や子どもの寝ている向きのリアルタイム配信、緊急時の連絡ツールなど、それまでは手書きだったものをデジタル化しました。また、勤怠管理システムやシフト管理システムも導入し、IT化をいち早く進めてきました。
「こういったシステムは、どろんこらしさを大切にしながらカスタマイズができるよう、自社で開発してきました。その根底には保育の質を上げるために、楽ができるところは徹底的に楽をしてほしいという思いがありました」と石川さん。
2020年には雇用形態を問わずスタッフ約2000人にスマートフォンの貸与を開始しました。
全スタッフに貸与することで、ICT化の心理的ハードルを下げ、業務の効率化と保育サービスのさらなる更新を目指したからです。
実は石川さん、どろんこ会グループに入社する前はシステム開発企業の取締役を務めていました。その時のクライアントがどろんこ会グループだったため、保育とITを結び付ける取り組みには20年近く携わってきました。
「当時からいろいろな保育園を見て回っていましたが、デジタルを使うことでもっと楽ができるはずなのに楽をさせてもらえないという場面にたくさん出合ってきました。世の中の技術はどんどん更新されており、保育園だけ変わらないままでは保護者の方もギャップを感じると思います。そのため、ITの啓発活動も兼ね、多くの施設長、スタッフと対話を重ねてきました」と振り返ります。
「ただすべてをIT化すればよいと考えているわけではありません。『人対人コミュニケーション』であったり、お迎え時にその日の子どもの様子を伝えたり家庭での様子を聞く『3分間伝達』といった、いわばアナログでなければできないことに時間を確保するためにデジタルを併用すればよいと思います。今後は現場の意見を取り入れながら、グループのもつデータを利活用できる仕組みづくりを考えたいです。どろんこ会グループの未来のためにやるべきことを整理し、推し進めていきたいと思います」と展望を語りました。
どろんこ会グループでは今後も、ITを効果的に活用し、保育の質を上げ、子どもたちによりよい保育環境の提供に努めてまいります。