異年齢保育と環境構成 三筑どろんこ保育園の子どもたちが変わった!
2022.11.24
どろんこ会グループでは全園で「異年齢保育」を実践しています。
0、1歳児では愛着形成と個々の発達を大切にするため、発達段階に合わせた保育を行いますが、2歳児以上では縦割りや横割りのグループは作らず、生活や基本的な活動を共にしています。
今回は2021年4月に福岡県福岡市に開園し2年目を迎えた三筑どろんこ保育園が、どのようにして異年齢保育を進めてきたかをお伝えします。スタッフは試行錯誤しながらも兄弟姉妹のように共に暮らす「大きなひとつの家」を目指し、日々奮闘中です。
どろんこ会グループ九州2園目 定員120人の認可保育園
三筑どろんこ保育園は、どろんこ会グループの九州では2園目の展開となり、博多の中心部から電車で約20分、駅から徒歩約8分の好立地にある認可保育園です。定員120名という大規模園で、築山や土管といったどろんこ保育園ならではの園庭があり、子どもたちがのびのびと過ごすことのできる環境です。
開園当初、0、1、2歳児は初めての保育園で、3、4、5歳児は他園から転園してきた子どもたちがほとんどという状況でした。大人も子どもも落ち着くまでに少し時間を要しましたが、2年目に入り室内環境のつくり方に注力するようになったところ、子どもたちに変化が現れたと言います。
異年齢保育はただ混ざって活動するだけではない
どろんこ会グループの園舎は異年齢保育・インクルーシブ保育を実践するための造りになっています。
0歳児のほふくエリアを除き、全ての子どもが一人ひとりが自分の意思で活動を選択し、頼りたい相手、遊びたい相手、遊びたい場所を自由に選んで行動できるようにするため、基本的には保育室に壁を作っていません(一部例外あり)。
そのため、スタッフは「ゾーン保育」を実施し、さまざまな年齢の子どもたちを見守ることになります。
ゾーン保育とは、例えば1階、2階、階段、縁側、築山、木登りゾーンというように子どもたちが過ごす場所を幾つかに分け、スタッフは年齢問わず各ゾーンに集まった子どもを見守り、思考や活動を導きます。
1年目の子どもたちの活動について、三筑どろんこ保育園で施設長を務める北原さんはこう振り返ります。
「園庭の遊びも散歩に出かける時も年齢の異なる子どもたちが混ざっていたので、異年齢保育を実践できていると思っていました。ところが室内を見た時、置いてあるおもちゃの数や内容、各コーナーでの遊び方について問題があることを、現場に来た安永理事長から指摘を受けました」三筑どろんこ保育園は2階建てで、2階が乳児室(0歳児、1歳児)、1階が2歳児から5歳児が過ごす幼児室としています。自由に行き来ができるようにはなっていますが、2階に幼児向けのおもちゃがなかったり、1階では乳児が触ると危ないからとはさみや小さなブロックを置いていなかったり、各年齢に必要なおもちゃが、子どもたちが行った先になく、遊び込むことができていないという状況が見られたと言います。
そこでまず、各年齢で子どもがその時に興味をもっている遊びは何か、どのようなコーナーがあれば楽しいかを、スタッフ同士で徹底的に話し合いました。読み聞かせができる絵本コーナーや図鑑を集めたコーナー、レストランごっこに適したままごとコーナーや、電車ごっこができる部屋など、遊びで部屋を分けるようにしたところ、スタッフが予想しない子どもたちの姿が見られるようになりました。
「まずは2階に行く幼児が増えました。乳児室に来た幼児は率先しておもちゃなどの片づけをするようになりました。それまではスタッフが伝えても片づけなかったにもかかわらずです。そして、それを見た乳児も真似をして片づけができるようになりました。一方、幼児室に乳児が来ると積み上げた積み木を壊されたり遊びの邪魔をされるからと嫌がっていた幼児もいたのですが、年下の子の行動を許すことができるようになり、一緒に遊んだり、諭したりするようにもなりました」と北原さん。
「共に過ごす中で、最初は乳児たちに行動を真似されるのを嫌がっていた幼児たちも、だんだんとそれがうれしさに変わり、気がつけば雑巾がけやさくらさくらんぼリズムや散歩などの日課でも年下の子に寄り添ったり、まとめるリーダーシップを発揮したりと、スタッフが何も言わずとも自然に行動できるようになっていきました」と、驚きと共に話しました。
保育室内の環境が変わると子どもが変わる
北原さんは保育歴30年以上の大ベテランですが「これまで異なる年齢の子どもたちが一緒に過ごすことが異年齢保育と思っていましたが、保育室内の環境の準備や構成を変えることで、大人が言葉をかけずとも子どもがこんなに変わるということに気づかされました」と、さらに学びを深めていきたいと意欲的です。
「異年齢保育では乳児は年上の子の真似をするので成長が早いと感じます。幼児は年下の子のお世話をするようになり、保護者がお迎えに来た際には荷物を運んでくれたり、靴を脱がせてくれたりすることも。そういった姿を見て保護者様から『うれしい』という声をいただくこともあります。年齢を超えた友達ができることも一斉保育や横割り保育ではなかなか見られないことではないかと思います」と、北原さんの話しぶりからは子どもたちの成長を誇らしく感じていることが伝わりました。
このように室内環境を変えることで子どもたちが変わる姿を目の当たりにしたことで、スタッフも環境構成の大切さをあらためて実感したと言います。遊びのコーナーの広さやおもちゃの置き方など、こまめな調整を心がけるようになりました。
「今後も、一人ひとりの育ちに合った最適な環境のなかで心も体もたくましい子どもを育てていくために学び続けていきたいと思います」と決意新たな三筑どろんこ保育園にご期待ください。