保育園バスでの園児の置き去りなどを防ぎ命を守る どろんこ会の安全対策
2023.03.02
2021年、2022年、立て続けに子どもが送迎バスに取り残され死亡するという痛ましい事件が起きました。これを受け国は2023年4月から送迎バスへの安全装置の設置、現場での点呼を義務化することにしました。
どろんこ会グループの保育園では園と家庭の送迎は行っていません。しかし、畑仕事や園庭のある系列園での戸外遊び、遠足など保育活動の幅を広げるために専用のバス、通称「どろんこバス」を用意しています。
今回は、どろんこバスにおいてどのような安全対策をしているのかをお伝えします。
道路交通法に基づき、子どもを守るための法人独自の項目も設定
どろんこバスは現在10台運行しています。エリアごとに分けて複数の施設が共用していますが、各バスに専任の運転職が付いています。道路交通法に基づく「安全運転管理者」には施設長を任命しています。安全運転管理者の業務は以下の9項目があります。
- 運転者の適正・状況把握
- 運行計画の作成
- 長距離・夜間運転時の交替運転者の配置
- 異常気象時の安全運転の確保
- 点呼等による安全運転の確保
- 酒気帯びの有無について目視およびアルコール検知器による確認
- 酒気帯び確認の記録保存とアルコール検知器の常時有効保持
- 運転日誌の備え付けと記録
- 運転者に対する安全指導
どろんこ会グループでは上記を徹底するとともに、定期的に本部と運転職スタッフの会議の場を設け、常に最新の情報を共有し、個別の面談では保育者の一人としての社会的責任を意識する指導を行っています。
クラウド上でリアルタイムに把握 安全指導にもつなげる
どろんこ会グループではバスの運行管理についてマニュアルを設け、安全管理を徹底してきました。しかし、各地の事故発生を踏まえ、これまでより一層強い意志をもって子どもの置き去りや事故を防ぐため、さらに強固な仕組みづくりに注力することを決め、2021年以降、新たに次のような施策に取り組みました。
一つはアルコール検知器の導入です。飲酒運転による事故のニュース、道路交通法改正の検討を受け早い段階で動き、必要数を確保し準備を進めてきました。現在使用している機器は、本人確認が必ずできるよう顔認証を必須としており、リアルタイムでクラウド上で本部にいる管理者にデータが届けられるものとなります。
二つ目は運転職スタッフによる降車時の空席確認と報告です。これまでにも子どもたちがバスを降りたのち、車内に残された子どもがいないか一番後ろまで行って目視で確認し、チェック表で管理をしていましたが、さらに最後部座席から運転席に向かって車内を撮影し、そのデータを本部と共有するようにしました。これは戸外活動先、帰園時と2回実施しています。
また、2022年12月20日に国土交通省が送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドラインを策定したことを受け、どろんこバスは送迎用ではないものの、安全装置を車内最後部に装着しました。子どもたちが降車後、運転職スタッフが確実に後ろまで行かないとアラームが鳴り続ける仕組みとなっています。
三つ目は、運行日誌を手書きからデジタル化にしたことです。手書きの場合、記帳内容が平準化されないこと、本部の管理者がタイムリーに確認しづらいことが課題でした。クラウド型車両管理システムを導入することで、各車両にGPSが付いているため位置情報や走行履歴をリアルタイムに把握できるようになりました。さらに走行速度も把握できるため、急減速や急加速など危険運転につながるような運転傾向がないかを確認することができるようになり、安全指導にもつなげています。
何よりも園児の安全を第一に それが運転職スタッフの使命
バスの運転には上記以外にも日々の点検も欠かせません。灯火点検、タイヤホイールに緩みがないか、冷却水に漏れがないか、エンジンオイルやバッテリーの確認、第三者による免許証携帯の確認など、運転前にすべきことはたくさんあります。
武蔵野どろんこ保育園(東京都西東京市)で運転職を務める岩井さんは「何よりも子どもたちの安全を第一に、常に緊張感をもって運転にあたっています。どろんこ会の看板を背負って運転していますので、交通ルールを正しく守り、急加速や急ブレーキをかけることのないよう、速度はゆっくりを徹底しています」と、日ごろ気を付けていることを話します。
ほかにも、シートベルトが子どもたちの体に合っているかを確認し、窓から身を乗り出さないよう、かつ換気もできるように窓の開け具合を調整し、乗降時に怪我をしないよう必ずドアのそばで見守るなど細やかな気遣いも忘れません。
どろんこ会グループでは、運転職スタッフにも「にんげん力」を育むという法人の理念の達成を目指し、保育の一環であることを忘れず高い職務意識をもつことを求めています。
運転職スタッフは大手私鉄バスの元運転士や元消防士など多彩なキャリアを背景に子どもたちと日々積極的にかかわっています。そして子どもたちの命、安全を守ることに誇りをもち、どろんこバスの運行に携わっているのです。