1年かけて梅を学んだ園児たち メリー★ポピンズ kids朝霞ルームの食育計画
2023.03.16
メリー★ポピンズ kids朝霞ルーム(埼玉県朝霞市。以下、kids朝霞ルーム)は昨年12月に、埼玉県入間郡越生町にある「梅の里おごせ 山口農園」に遠足に出かけました。
実はkids朝霞ルームの子どもたちは、年度初めから継続的に梅についてさまざまな体験を積み重ね、この遠足は集大成ともいえる活動となりました。
今回は「梅」にまつわるkids朝霞ルームの連続した食育計画についてお伝えします。
梅干し屋の方が保育園に来園 梅について学ぶ子どもたち
どろんこ会グループでは毎年6月になると各施設で梅仕事を行います。
安永理事長と高堀代表をはじめスタッフが収穫した青梅を各施設に送り、子どもたちは梅シロップや梅干しを作ることを楽しみにしています。
黒沢さんも毎年梅を仕込みながら、梅そのものについてさまざまな疑問が湧いてきたと言います。そこで自身が学ぶため梅農家に見学に行ったり、剪定体験に参加したりしました。その中で出合ったのが茨城県の梅専門店「吉田屋」の梅干し。食べてみてあまりのおいしさに感動したと言います。
「毎年梅仕事をしていても梅干しは苦手で泣いてしまう子もいるのですが、どこでどのように梅が育ち、出荷されているのか、また梅干しに加工する人がいることを子どもたちに伝えることができれば変わるのではないだろうかと考えました。そこで吉田屋の代表取締役の大山さんに相談したところ、園にお越しいただき、直接子どもたちに梅についてお話しいただけることになったのです」と経緯を語ります。
昨年5月、大山さんは梅の実がどのように育ち、収穫され、出荷されていくのかを豊富な写真や動画で子どもたちに話し、さらに前日に採れたばかりの新鮮な青梅を子どもたちにプレゼントしてくださいました。
新鮮な青梅の手触りや、水の中に入れた時の産毛の輝きを見て驚く子どもたち。一人一つ、自分だけの梅シロップを作ることになりました。
大山さんの話を聞いた後の子どもたちの目の輝きが違いました。梅仕事が一気に自分事になったように感じました」と黒沢さん。
子どもも大人も試行錯誤の梅加工
その後6月には梅染めに挑戦しようと梅の実を煮てみたところ、全く色がつかず失敗に終わります。
さらに7月には調理スタッフからのアイデアもあり、梅干しと梅ジャム作りにもチャレンジ。梅干し作りでは園の目の前の畑で育てている赤しそを収穫し、塩もみ、漬け込み、天日干しと、それぞれの過程を子どもたちと楽しみながら取り組みました。
「なぜしそを入れるのかを子どもたちが自分たちで調べる姿も見られました。実は途中でカビが発生してしまうなどの失敗もあったのですが、吉田屋の大山さんにも教えていただきながら子どもも大人も一緒に試行錯誤しました」と黒沢さんは苦笑しながら振り返りました。
やはり直接体験は大事 梅干し嫌いもお代わりできた!
いよいよ梅農家への遠足を計画していたところ、大山さんから山口農園をご紹介いただきました。実際に尋ねてみた黒沢さん、「ぜひ子どもたちを連れて行きたいと思いました。生産性を重視して通常だと5、6年で木を切って植え替える農家も多い中、山口農園は木をとても大切にしており、樹齢90年にも及ぶ木が守られていたのです。その思いに感動したことと、朝霞と越生が姉妹都市であることにもご縁を感じました」と話します。
「子どもの食育では収穫など分かりやすい作業にスポットを当てがちなのですが、実のならない寒い季節には剪定をして一本一本丁寧に世話をしていること、丁寧な管理のおかげで毎年実をつけることなど、農家の方のさまざまな努力を伝えたいと思いました」これがあえて冬の遠足の理由なのです。
子どもたちにとっては初めての梅畑での剪定体験。のこぎりとはさみを使い、枝の選び方を教えていただきながら剪定に挑戦します。枝はとても硬く大変な作業になりましたが、達成感を味わうことができました。
山口農園には田んぼもあり稲も育てており、この日は野外で羽釜を使って炊飯するところも見せていただきました。火おこしには梅の枝を使い、ほんのりと梅の香りが漂います。 昼食に炊き立てのご飯と梅干しをいただいたところ、いつもは梅干しを食べられない子も、なんとお代わりをするほど食べることができました。
「はちみつ漬けの甘い梅干しも食べられなかったにもかかわらず、食べることができ本当に驚きました。添加物のない、ホンモノの味を味わったからではないでしょうか」と黒沢さんも驚きを隠せません。
子どもの興味関心を引き出す連続性をもった保育計画
黒沢さんは昨春から一つのテーマをもって活動を続けてきた理由を「今回のような食育においては食材のルーツや成り立ちなどを知り、食材のありがたみを知ることは大切と考えています。ただ、子ども一人ひとり興味をもつポイントやタイミングは違うので、そのきっかけをより多く創るためにも保育計画では連続性も意識しています」と話します。kids朝霞ルームでは食育以外にも花育や染め物体験も連続して計画しているのです。
「今後も子どもたちがジブンで考えて活動を選ぶことができるよう、その時の選択肢ができるだけ多くある環境づくりに取り組んでいきたいと思います。また幼児だけでなく乳児の直接体験もさらに増やしていきたいです」と意欲的な黒沢さん。
次回は遠足で訪ねた山口農園の山口さんに園にお越しいただき、共に梅染めに再挑戦する予定です。
このようにどろんこ会グループのスタッフは、今子どもたちにどのような経験が必要かを考え直接体験を重視し、各々の得意や興味関心も生かしながら、保育計画を立てています。