介護福祉士としての経験を生かし保育と発達支援へ つむぎスタッフインタビュー
どろんこ会グループが運営する認可保育園と児童発達支援事業所「つむぎ」の併設施設では、保育園、つむぎ双方のスタッフが共に全ての子どもを育てています。
今回は、新羽どろんこ保育園に併設されている発達支援つむぎ 新羽ルーム(神奈川県横浜市)に保育士として勤務する中川さんに、どろんこ会グループとの出合いや併設施設での働き方についてインタビューしました。
介護福祉士の資格を取得しながらも保育の道へ
—いつごろから保育士になりたいと考えていたのでしょうか?
中学校の職業体験で自分が通っていた保育園に行き、子どもと関わることが楽しく、子どもの面倒を見ることが好きだと思ったことがきっかけです。
—進路を決めたのはいつでしょうか?
進学した高校で保育や介護に関する授業を受けることができ、保育園に実習に行く機会もあり、保育の道に進むことを決めました。ただ保育だけではなく、介護福祉士の資格を取得できる専攻科のある学校を選びました。
—なぜ介護福祉士の資格も視野に入れたのでしょうか?
私が通っていた保育園では障害のある子も共に過ごしていました。何かすると喜んでくれる、表情で反応してくれることがうれしかったことをよく覚えています。また、祖父に難聴と半身まひがあり、介護をする祖母を身近に見ていたこともあり、介護や障害のある人と一緒にいることが当たり前という環境にありました。
高校のころには自閉症に関する漫画を読み、一人ひとり特性が全く違うことを知りました。どのような障害があり、どのような支援が必要なのか、漠然としか知らなかった障害についてより詳しく知るためにも、介護と福祉について学ぼうと思いました。
—介護を学びながらも、やはり子どもと関わる道を選ばれたのですね?
はい。何より子どもの成長を見ることができるのは楽しく、短期間で変化を遂げ、一つのことに対し多くの反応を返してくれる子どものパワーが魅力でした。
—卒業後はどちらに就職されたのですか?
通っていた保育園への就職が決まり、4年間勤めました。実際に現場に立つと、大人数の中で障害のある子に目を向けることに難しさを感じ、もっと知識があれば保育の引き出しが増えるのではないかと考え、重症心身障害児(者)の入所施設への転職を決めました。
重症心身障害児への介護を通じ学んだこと
—そこではどのような仕事をされていたのでしょうか?
重度の障害をもつ子どもから大人までが生活する場で、施設内に特別支援学校の分校もありました。私は生活支援員として介護にあたりました。
—保育園とは全く異なる環境と思いますが、特に学びを深めたことはありましたか?
入所している方は言葉を発することができなかったり、自分で動くことができない方も多くいらっしゃいました。ただ、どの方も健常者と同じように生活し、いろいろなことを楽しみたいという思いをもっていることに気がつきました。介護ではその方の思いをくみ取って、一人ひとりに合わせた支援計画をつくる必要があります。ご本人の意思の表出が少なくとも口角を少し上げたり、手が少し動いたりといったわずかな動きを見逃さず、また心拍数やサチュレーションの動きも見ることで思いをくみ取り、寄り添う支援ができることがとても勉強になりました。
また、施設から外に出ることもなかなか難しいため、圧倒的に経験の機会が不足しているということも感じました。その人が好きなこと、やりたいことを少しでも経験できるよう提案し、日を浴びたり風を感じること、四季を感じることを大切に支援にあたりました。
横浜市初の併設施設でインクルーシブ保育に挑戦
—重症心身障害児(者)の施設で6年間勤めたのち、転職を考えたのですね。
発達支援に取り組んでみたいと考えていたところ、ちょうどつむぎ 新羽ルームのオープニングスタッフの募集を見つけました。
調べてみると、障害の有無にかかわらず子どもたちが混ざって過ごすこと、ヤギがいて戸外活動も盛んなところが、私が通っていた保育園に似ていることにひかれました。ここなら子どもたちの思いを大事にしながら支援ができるのではないかと思いました。
—つむぎ 新羽ルームは、新羽どろんこ保育園の空きスペースを活用して併設するという横浜市初の取り組みとなりました。入職当初にとまどったことなどはありましたか?
当時は自治体から園とつむぎの活動を分けるように指導があり、私が思い描いていた「混ざり合う」がうまくいかず、子どもたちにとって何が一番よい環境なのか悩んだりもしました。
—混ざって活動することに課題を感じる中、どのような工夫をしましたか?
何よりも子どものことをよく知ることが大事だと思ったので、つむぎと園で情報交換するよう心がけました。つむぎからは利用児の特性を共有し、園から相談があれば話し合い、支援計画を立てる時には園スタッフの意見も聞くようにしました。
つむぎのスタッフは利用児との距離が近くなりがちなのですが、もっとスタッフ同士が混ざり合っていれば、子どもたちもどのスタッフにも安心して頼ることができるのではないかと思っています。双方が助け合うことで、どろんこ会のインクルーシブ保育が成り立っていると感じています。
子どもたちが一つでも多くの経験をできるように
—つむぎ 新羽ルームはどのような職場ですか?
働いているスタッフは個性豊かで取得している資格も多様です。だからこそいろいろな意見が聞け、支援の幅も広がると感じています。たとえ意見がぶつかっても、「子どもを真ん中に」という原点に立ち戻りやすいのも、同じ方向を向いているからだと思います。施設長も常に私たちスタッフに意見を聞いてくれ、また自身の失敗談も気軽に話してくれるので話しやすく、とても働きやすい職場です。
—つむぎ 新羽ルームでやりがいを感じた子どもとのエピソードがあれば教えてください。
午前中からつむぎを利用している子どもたちは、毎日保育園の子どもたちと一緒に散歩に出かけています。新羽周辺は自然が豊かで舗装されていない山道を登ることもあるのですが、入園した当初はバランスをうまくとれずによく転び、スタッフに抱っこを求めていた子がいました。ですが日々木登りや斜面の上り下りなどでたくさん体を動かしたため徐々に筋力がついてきました。また、周りにいる保育園の子どもたちが登り方を教えてくれたり、また自らも真似をすることで、いつしか一人で登ることができるようになりました。日々の積み重ねによる子どもの成長や変化を目にした時こそ、やりがいを感じます。
—施設長の浅田さんにも中川さんの働きぶり、入職後の成長について聞いてみました。
中川さんは子ども、スタッフ、保護者の方、誰に対しても落ち着いて優しく寄り添うため、一緒にいると落ち着くし、子どもたちからも好かれています。一方で、入職直後は1人の子どもに寄り添いすぎてしまうと周囲が見えなくなることもありました。併設施設では集団の中で子どもを見ていく必要があるため、この2年で子どもとの距離の取り方が上手になってきたと思います。
—中川さんに今後期待することは何でしょうか?
4月から保育園と児童発達支援事業所の施設の共用と、スタッフも双方の子どもの支援をしてよいと認められました。それを受け施設内でのインクルージョンをさらに進めていくために、子どもたち一人ひとりが好きな場所で過ごせるような工夫に取り組んでいます。スタッフ配置を考えなければなりませんが、つむぎと園、双方の子どもたちを全スタッフで見るということを実現していきたいと思っています。だからこそ、中川さんには皆を引っ張る存在として、今後は施設全体の質の向上に向けて、後輩の育成にも力を入れてもらいたいと期待しています。
—最後、中川さんに今後挑戦してみたいことなどを聞いてみました。
前職で障害のある方の経験の機会が少ないことを痛感してきたので、つむぎの子にはより多くの体験をしてもらいたいと思っています。そのためにも自分の知識を増やすことでさまざまな支援を提供できるようになりたいです。
今、勉強しているのは小学校への接続についてです。卒園後について悩まれている保護者の方も多いので、相談にのったりアドバイスできるよう、子どもはもちろん保護者の方の力にもなれたらと思っています。
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