どろんこ会 安永理事長が「保育博ウエスト2023」の主催者特別セミナーに登壇しました

2023年7月20日(木)に開催された「保育博ウエスト2023」主催の業界の著名人による特別セミナーに、社会福祉法人どろんこ会の安永理事長が登壇しました。セミナーの様子をレポートします。

壇上に立つ安永理事長
将来の社会参画のために不可欠なインクルーシブ保育について語る安永理事長

テーマは「保育×児発×放デイ×就労支援 全ての人がよく生きられる社会へ」。

25年にわたるインクルーシブ保育の現場実践を通じて、障害児の就労の壁を目の当たりにしてきた安永理事長。障害を理由に必要以上に守り、分ける福祉を「ジブンで選ぶ・社会を生きる福祉」へと変えなければならないと、2022年、どろんこ会グループは就労支援事業も開始しました。安永理事長は、将来の就労や社会参画を見据えた全ての子どもに「生きる力」を育む保育・教育について、実践実例を交えながら講演しました。

講演の聴講者
会場は満席。聴講者は120名を超え、立ち見で参加してくださった方も

「守る支援」から「ジブンの足で人生を歩むための支援」へ

2022年9月、国連は日本政府に対し、障害児を分離して行う特別支援教育の中止を勧告しました。安永理事長はその勧告にも触れながら、発達障害があるとされる子どもたちを例に、幼児期の児童発達支援への通所や「発達障害の診断書=保育士加配」とされること、学齢期では特別支援学級や特別支援学校、そして放課後等デイサービスと、分離されている保育や教育の実態を説明。幼児期からの区別・特別扱いが、高校入学や成人前に就業に対する自己検討・自己選択の機会、さらには社会に参画する機会も奪っている日本の問題点に言及しました。

分離が子どもたちの未来に及ぼす影響を訴える安永理事長
幼児期からの分離が子どもたちの未来に及ぼす影響を訴える安永理事長

障害のある子どもたちが自分の力で人生を歩み、自分の命を守り、時には周りに助けられながら生きていくためには、生活力や自己選択力を育むことが必要です。そのために、保育者はどのような保育・教育・子育てを行っていくべきなのか。安永理事長は25年間にわたって実践してきた異年齢・インクルーシブ保育の実例から、子どもたちの変化や成長ぶりを紹介。「発達障害の診断書=保育士加配」という考えを捨てることを訴えました。

形だけの多機能を超える。自治体との話し合いの軌跡

どろんこ会グループは業界に先駆けて、新規開所する認可保育園に児童発達支援事業所を併設し、双方の子どもたちが共に生活し、遊び、育ち合う一体的な支援を行ってきました。本セミナーで安永理事長は、既存の認可保育園の空きスペースを活用して作った児童発達支援事業所の事例を紹介。日本で前例のないチャレンジに「どうやったらできるか」と自治体と何度も協議を重ね、2021年、新羽どろんこ保育園(横浜市港北区)の空きスペースにつくったのが発達支援つむぎ 新羽ルームでした。

新羽どろんこ保育園での子どもたちの様子
保育園と児童発達支援の子どもたちが共に生活する併設施設の様子

ですが、建物を一緒にしたからといって、すぐにインクルーシブ保育が可能になるわけではありませんでした。安永理事長は併設施設の開所後に味わった困難、保育園と児童発達支援の双方のスタッフが交わらず、子どもたちも同じ状況になってしまったことに触れました。インクルーシブ保育に興味をお持ちの聴講者の皆さんのヒントになるよう、八山田どろんこ保育園(福島県郡山市)と発達支援つむぎ 八山田ルーム(以下、つむぎ 八山田ルーム)の併設施設でその困難を解決してきたプロセスも紹介。友達や保育者とうまく関わることができず、他園を退園させられるほどだった子どもが、インクルーシブ保育の中で周りの子どもたちと少しずつ関わることができるようになり、笑顔を取り戻していった変化などの実例を語ると、多くの聴講者の方がうんうんとうなずきながら共感してくださっていました。

八山田どろんこ保育園と発達支援つむぎ 八山田ルームの紹介
八山田どろんこ保育園とつむぎ 八山田ルームの実例を具体的に紹介

放デイ×就労支援 ~人生の選択肢を広げる~

最後のテーマは、働く大人と中高生の共存への挑戦です。児童発達支援・放課後等デイサービスと就労支援B型事業所を併設した発達支援つむぎ 武蔵野ルームと就労支援つむぎ 武蔵野ルーム(東京都西東京市)。中高生が自分の得意なことを探索し、さらに、働く大人を同じ空間で間近で見ることで職業への興味喚起や職業選択の機会が得られる場所としてつくりました。

つむぎ武蔵野ルームのカフェ
幼児から中高生、大人が混ざり合うカフェスペースが特徴のつむぎ 武蔵野ルーム

しかし、ここでも開所後の困難はたくさんありました。安永理事長は、中高生の「働く意欲を高める」にはどうしたらいいのか、受けてきた教育や価値観が違う18歳から60歳が一緒に働くことの難しさなどに触れながらも、社会参画に向けて支援する放デイと就労支援双方のスタッフの試行錯誤やチャレンジを紹介しました。

コーヒーをいれる就労支援つむぎ 武蔵野ルームのご利用者
就労支援ではつむぎカフェを運営

「あたらしい保育イニシアチブ2023」にも登壇決定。こども家庭庁成育局の保育政策課長がゲストパネリスト

2023年9月10日(日)東京大学で開催される「あたらしい保育イニシアチブ2023」でも「認可保育園の中に児童発達支援事業所をつくってみた。」をテーマに講演します。当日は、こども家庭庁成育局の保育政策課長 本後健様をゲストに迎え、どろんこ会グループの取り組みや試行錯誤、失敗を乗り越えてきたプロセスなどを、安永理事長と八山田どろんこ保育園および発達支援つむぎ 八山田ルーム(福島県郡山市)の施設長二人と共にお話します。現場実践をひたすら積み重ねてきたどろんこ会グループにしか伝えることのできないインクルーシブ保育の秘話を公開します。

詳細・お申し込みはこちらから

あたらしい保育イニシアチブ2023公式サイト

「あたらしい保育イニシアチブ2023」お申し込みフォーム

併設施設および弊法人のインクルーシブ保育に関する視察のご希望について

セミナー終了後は、視察希望のお声をたくさんいただきました。ご希望にお応えできるよう、視察ツアーの企画を検討しています。準備が整い次第、ご案内いたしますので、併設施設および弊法人のインクルーシブ保育に関する視察・お問い合わせにつきましては、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

お問い合わせフォーム

関連する記事

最新のどろんこアクション記事

どろんこ会からのお知らせを見る

PAGE TOPtop