どろんこ会のシンボル「ヤギ」vol.4 子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園「ナナ」編
2023.09.21
どろんこ会グループが運営する施設では49頭のヤギが暮らしています(頭数は2023年3月時点)。
今回は子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園に暮らすヤギのナナと、ナナを溺愛するスタッフたちを紹介します。
動物好きのスタッフに愛されて
つむぎ 浦和美園はどろんこ会グループ初の児童発達支援センターとして、2018年4月に開所しました。
発達支援を行う施設にありがちな、子どもたちの行動を制限する柵や、外から見えないようにする目隠しは取り払い、広い園舎と園庭の中で子どもたちが自由にのびのびと過ごすことができるような設計となっています。園庭には築山と木登りができる木々が育ち、子どもたちは戸外活動を存分に楽しんでいます。
開所から2カ月後、念願のヤギを迎えることができました。それがナナです。2018年3月に牧場で生まれました。
ナナと同じく2018年にどろんこ会グループに入職し、つむぎ 浦和美園に配属となった野﨑さんは大の動物好き。「実家ではたくさんの生き物を飼っていて、学生時代には北海道で馬を引くアルバイトをしていたこともありました。馬ふんのにおいが大好きで(笑)。つむぎ 浦和美園に入職する前に働いていた保育園でもヤギや鶏だけでなく、クジャクやエミューもいて、私は飼育担当でした」と、常に生き物に囲まれた環境にいたと言います。
ナナが来たばかりのころのこともよく覚えているという野﨑さん。
「本当に真っ白な赤ちゃんでした。最初は園庭に放し飼いで、鶏もナナになついていて、いつもくっついて過ごしていました。子どもたちはナナがかわいくてずっと追いかけていましたが、ナナはそれがいやで、私のところに逃げてくるんです。ナナにとっての母のような存在だったと思います」と、優しい笑顔を見せます。
高橋さんは2021年に入職。哺乳類より爬虫類好きという高橋さんにとって、ヤギの飼育は初めての経験でした。
「ナナに最初に会った時、ヤギって思ったより大きいなと驚きました。慣れるまではうまく対応できなかったのですが、毎日顔を合わせているとなんとなくですが、鳴き方でナナがどうしたいのか、感情が分かるようになってきました」と、少しはにかみながらも楽しそうに話します。
施設長の橋本さんも、「子どもたちがナナに近づきたいけれど怖いな、という時に、高橋さんが『ナナは近づいて良い時と駄目な時があるんだよ。今はどっちだろう?』と、間を取り持ってくれるようになりました」と言葉を添えます。
子どもにも大人にも癒やしの存在
つむぎ 浦和美園の子どもたちにとって、ナナの存在は子どもたちの成長にどのような影響を与えているのでしょうか?
「気持ちの切り替えがなかなかうまくいかず、玄関でずっと泣いている子も、ナナに餌をあげようかという一言で泣き止んだりします。動物の癒やしの力はすごいなと思います。また、子どもたちはナナに餌をやるにはどうしたらよいか、いろいろ考え、工夫します。距離を取れるよう長い草にしてみたり。枯れた草は食べてくれないと分かったら違う草にしてみたり。最終的に自分の手から餌を食べてもらえた時の子どもたちの表情はたまらないですね」と野﨑さん。
高橋さんは「動物は大人も子どもも関係なく対等に接してきます。自分より弱いと判断すると、頭突きや威嚇をすることもあります。だからこそ子どもたちもどう接すればよいか、手探りながら考えて行動するようになります。ヤギという大型哺乳類を飼っているからそういう機会を創れるのかもしれません」と。
ただ2人とも「ナナの存在はなんといっても一番の癒やしです」と口をそろえて言います。
野﨑さんはナナが大好きなあまり、とれた角に自分で穴を開けてネックレスにして身につけているほど。「ナナは一般的に見るとヤギ界で器量はよくないかもしれませんが、私にとっては一番かわいい。交配に連れて行ったらいじめられてしまうのではないかと心配で」と、親心をのぞかせます。
高橋さんは「自分はナナの兄貴のつもりです。押し相撲をしたり、散歩をしたり、日々のコミュニケーションが楽しみです」と妹の世話が楽しくて仕方がないといった様子です。
ナナは子どもたちだけでなくスタッフにとっても癒やしの存在なのです。
生き物を飼う責任を子どもたちにも伝えていく
ヤギを飼育する以上、ただ愛情をそそぐだけではなく、小屋掃除や体調管理なども欠かせません。小屋掃除は子どもたちの日課としていますが、子どもたちにとって気持ちの折り合いとその日に行わねばならない作業を結びつけることは難しい時もあると野﨑さんは言います。
「掃除はまずは大人がやってみせたり、子どもが使いやすいようなトングや小さな掃除用具を用意したりすることで、子どもの興味を広げていくように工夫しています。子どもたちがヤギの世話を継続的に行えるようにするにはどうしたらよいか、スタッフ同士でも話し合っています」。
橋本施設長は「スタッフには愛情をかけることはもちろんのこと、誰かが世話をしてくれるからよいのではなく、世話も仕事の一つであることを伝えています。また以前勤務していた越谷どろんこ保育園や越谷レイクタウンどろんこ保育園では、子どもたちが過ごしている間はヤギが目に入るよう園庭に出すなどして、掃除や餌やりが自分事になるような意識づけに力を入れていました」と、これまでの経験を話します。
「生き物の世話は大変で命を預かるという重い責任を伴いますが、子どもたちが見せてくれる表情や成長は非常に楽しみです。だからこそスタッフもしっかり世話をしなければなりません。苦手なスタッフももちろんいますが、スタッフ同士で助け合いながら飼育に取り組み、連帯が生まれるのを見てきました。浦和美園には野﨑さん、高橋さんというヤギ愛最強スタッフがいるのでナナは生き生きと過ごせてるのではないかと思います」と、橋本さんは2人を頼もしそうに見つめました。
今後は園庭に「ヤギ広場」をつくりたいという野﨑さんと高橋さん。ナナはつむぎの子どもたちだけでなく、地域の方やほかの保育園の子どもたちにとっても癒やしの存在です。「近隣の保育園の子どもたちも散歩の際にナナに餌やりができると、とても喜んでくれるんです。ナナを介した交流もできるのではないかと思っています」と、さらにつむぎ 浦和美園を身近に感じてもらえるような場所にしていきたいと展望を語りました。
スタッフに「第二の保育者」と言わしめるほど、つむぎ 浦和美園の日常に欠かせない存在のナナ。お近くにお越しの際はぜひ会いに来てください。
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