「あたらしい保育イニシアチブ2023」にて「認可保育園の中に児童発達支援事業所をつくってみた。」をテーマに講演しました
2023.10.12
官民学が一体となり、時代を先取りする多様なテーマで保育について対話する場「あたらしい保育イニシアチブ2023」。9月10日に東京大学で開催され、どろんこ会グループは、こども家庭庁成育局の保育政策課長本後健様をゲストに迎え、「認可保育園の中に児童発達支援事業所をつくってみた。」というテーマでセッションを行いました。会場参加は約240名、オンライン視聴は約100名のお申し込みとなり、多くの方に聴講いただきました。
2015年、業界に先駆けて認可保育園と児童発達支援事業所の併設施設をつくり、インクルーシブ保育を推進してきたどろんこ会グループ。2021年には横浜市で運営する新羽どろんこ保育園の空きスペースを活用して、発達支援つむぎ 新羽ルームをつくりました。さまざまな壁を乗り越え実現した既存園の用途変更のエピソードも然ることながら、今回のセッションで一番伝えたかったのは「形だけの多機能化」を超えて、園と発達支援のスタッフが双方の子どもを共に育てるインクルーシブ保育をどう実践していくかでした。セッションの様子をレポートします。
こども家庭庁に聞く「保育所と児童発達支援等の一体的な支援(インクルーシブ保育)の制度改正」
セッション冒頭では、こども家庭庁成育局保育政策課の本後課長に、2022年の通知「保育所等におけるインクルーシブ保育に関する留意事項等について」で示された「保育所、児童発達支援事業所等の設備運営基準を見直し」について分かりやすくご説明いただきました。
省令改正前、どろんこ会グループの併設施設では、それぞれの事業の基準を満たしていても、双方の子どもたちとスタッフが混ざり合って生活したり、遊んだりすることに自治体から文書指導を受けるなど、併設施設でのインクルーシブ保育は制限を受けていました。今回の省令改正により「一体的な支援」が可能になったことをこども家庭庁の本後課長からあらためてご説明いただいたことは、併設施設でのインクルーシブ保育実践の後押しとなりました。
「形だけの多機能化」ではない「真のインクルーシブ保育」をどう実践するか
安永理事長は、障害のある子を必要以上に守り、分けて育てる日本の保育・教育・発達支援が、大人になってからも分離を生み、障害者の社会参画の機会を奪っている課題に言及。子どもたちに、自分の力で、時には人に頼りながら社会の中で生きていく力を育むためには、「異年齢保育・インクルーシブ保育」に取り組む必要があることを力強く訴えました。
また、これから認可保育園と児童発達支援事業所の併設施設を検討している経営者や園長に向けて、「併設化実現までの道のり」と「併設実現後に味わった困難」の秘話も公開。その後に福島県郡山市の併設施設である八山田どろんこ保育園の真島施設長、発達支援つむぎ 八山田ルームの阿久津施設長にバトンタッチし、現場での試行錯誤、失敗を乗り越えてきたプロセスなどを語ってもらいました。
会場では混ざり合って遊ぶ子どもたちの動画を流しながら、子どもたちの成長、変化のエピソードを紹介。また、モデレーターから「最初から双方のスタッフは混ざり合って、インクルーシブ保育ができていたのか」と問われると、真島施設長と阿久津施設長は開所当初のスタッフ同士のコンフリクトや失敗談、そして何をきっかけに双方のスタッフが混ざり合い、一体的な支援に取り組めるようになってきたのかを包み隠さず語りました。
セッションの最後、本後課長は「行政をはじめ、施設でも起こるさまざまなコンフリクトを取り払うのは制度、国が出す通知や省令であると同時に、現場からの『こうやりたい』という思いが合わさって、縦割りを崩していけるのだと思う。こうしたことを積み重ねていくことで、インクルーシブ保育が当たり前になっていく社会にしたい」と話してくださいました。
併設施設および弊法人のインクルーシブ保育に関する視察・講演のご希望について
セッション終了後は、視察や講演希望のお声をたくさんいただきました。ご希望にお応えできるよう、視察ツアーの企画を検討しています。準備が整い次第、ご案内いたしますので、併設施設および弊法人のインクルーシブ保育に関する視察・お問い合わせにつきましては、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。