新たな25年を見据え どろんこ会グループ2024年度を代表2人が語る

2024.04.04

#その他

代表インタビュー 全施設

2023年に25周年を迎えたどろんこ会グループ。安永理事長、高堀代表が2023年度を振り返りつつ、この先新たな25年を見据えた2024年度の取り組みを語りました。

安永理事長(左)と高堀代表
安永理事長(左)と高堀代表。福島県の八山田どろんこ保育園にて

どろんこのインクルーシブ保育が世の中を動かし始めた2023年度

—2023年度は全国の自治体や団体からの視察、研修、講演の依頼が相次ぎ、どろんこのインクルーシブ保育が明確に行政や保育業界全体に影響を与えた一年だったのではないでしょうか?

高堀:2023年5月に全国の自治体職員の方を対象としたインクルーシブ保育をテーマとしたセミナーにゲストとして登壇しました。256人のお申し込みをいただき、注目が集まっていることを実感しました。

2022年9月に、国連の障害者権利委員会が日本に対して改善勧告を発表したことを皮切りに、同年12月に厚生労働省から保育園と児童発達支援センター・事業所双方が同じ施設を共用でき、スタッフも双方の子どもの支援ができるよう認める文書が発出されました。そして2023年4月の省令改正といった背景もあり、全国の自治体や保育事業者から、認可保育園、児童発達支援事業所、学童保育室、放課後等デイサービスの4機能を併設した香取台どろんこ保育園(茨城県つくば市)への視察も相次いでいる状況です。

そのような中、2024年度に開園する3園全てが、保育園・こども園に児童発達支援センターないし児童発達支援事業所を併設した多機能型施設となります。私たちは今後も同様の展開をしていきたいと考えています。

完成したばかりの外観
4月1日に開園した東京都初のフルインクルーシブ施設「東大和どろんこ保育園と子ども発達支援センターつむぎ 東大和」

—2024年度に続き、2025年度も東京都目黒区、板橋区、小平市、茨城県つくば市にすでに開園が決まっています。

高堀:目黒区と小平市は公立保育園の民営化となります。待機児童問題がひと段落し、今後は公立保育園の立て替えのニーズがさらに高まってくると見ています。その担い手となるのはある程度組織力をもった社会福祉法人だと考えると、私たちどろんこ会がその役割を果たしていくと思っています。そのためにもどろんこ会の理念に共感する仲間がまだまだ必要です。

理念に共感してくれる仲間を集めることがカギ

—今後さらに施設が増えていくことを考えると、採用活動も非常に重要となってきます。

高堀:どろんこ会グループでは今、リクルーターによる採用の仕組みを構築したいと考えています。入職2、3年目の若手スタッフを中心に、2023年度は全国で46人のスタッフを任命し、学生との第一接点を担ってもらっています。就職活動の相談に乗ったり、時には一緒に食事をする中で、リクルーターが自分たちの保育を自分の言葉で語る。そうすることにより就活生にはどろんこ会グループをより深く知ってもらい、リクルーター自身の成長にもつなげることができます。

リクルーターと本部スタッフ
リクルーターを務めるスタッフとその活動を支える本部運営部のスタッフ

安永:そこで2023年度にスタッフの九州研修旅行を復活させて、その年に活躍したリクルーターを招待することにしました。どろんこ会グループでは長年、現場で日々頑張っているスタッフをMVPスタッフとして表彰し、理事長、代表と共に行く九州への研修旅行に招待していましたが、コロナ禍などで途切れてしまっていました。

高堀:このMVPの形を変えてリクルーターの中からの選出とし、2023年度はリクルーターと共に九州研修旅行に行きました。

安永:この研修旅行では保育園の視察をはじめ、登山なども楽しみますが、ずっと変わらず訪問しているのが鹿児島県の知覧です。太平洋戦争で多くの若者が特別攻撃隊として飛び立っていった地で、知覧特攻平和会館や富屋食堂などを巡ります。若いスタッフには特に、私たちは命を与えられて生かされているということ、1年1年を大事に生きていってほしいということを伝えたいと思っています。

代表2人とリクルーターで九州旅行へ
リクルーターと代表二人で鹿児島県にて標高924mの開聞岳に登りました

高堀:なぜこのようなリクルーターによる採用を促進したいかというと、私たちは採用において、一緒に働きたい、理念に共感してくれる仲間を集めることが重要だと思っているからです。思いがばらばらな人が集まってもよい保育はできません。

安永:最近では本部の運営部門や施設長をはじめとする現場スタッフも、人事採用部に任せるだけではなく、自分たちで採用に取り組むという風土がはぐくまれてきたと感じています。つい先日も、異動になった施設長から電話があり、異動先の周辺にある保育士養成校を調べて、まずは学校へのごあいさつに行ってきますと話していました。施設長にも自ら採用のためにできることを積極的にしていこうという考えが根付いてきており、スタッフが主体的に仲間を集めるというのはどろんこ会らしいなと思っています。

—2023年度は、どろんこ会グループに入職したスタッフを支援するためのキャリア相談室も発足しました。

安永:会社としてスタッフ一人ひとりの未来を一緒に考えていきたいと思い、2022年に試験的にセルフ・キャリアドッグを導入し、2023年4月から正式にキャリア相談室を立ち上げました。

今年度は157人の面談を実施し、着実に進めてきました。運営部長や施設長をはじめ、グループ内で自らキャリアコンサルタントの資格を取得する動きも広がっています。2024年度からは面談する人数が330人まで増える予定なので、この取り組みをさらに推し進めていきたいと思います。※1 下記関連リンク参照

自分を理解することの大切さを語る渡邊さん
運営部部長とキャリア相談室室長を兼務する渡邊さん

新たに旅行事業部も発足 農業体験をさらに充実

高堀:2023年度は新たに旅行事業部も発足しました。どろんこ会グループでは、新潟県南魚沼市での田植え・稲刈り体験ツアーを長年続けてきましたが、ここ数年は外部業者に委託していました。グループ内に旅行業務取扱管理者を設置し、自社で企画・運営できるようにしました。今後は田植えや稲刈り以外の子どもたちの農業体験活動や、スタッフの宿泊型研修なども提供していきたいと考えています。

慣れてくると縦横無尽に駆け回りました
南魚沼市での田植えツアーの様子

安永:田植えや稲刈りに挑戦してみたいと、どろんこ会グループに入職してくれるスタッフも多くいます。ただ、ツアーに参加する幼児クラスの担任になれなかったり、有償ボランティアに応募しても抽選で外れてしまったりと、なかなか参加することがかなわないといった声を聞きました。保育士自身の生きる力を身につける機会としても、特に新卒をはじめ20代、30代の若手スタッフが帯同できるような企画をできるよう内製化しました。また、自社で実施することで、さまざまな研修企画をスピード感をもって実現できると考えています。

高堀:例えば、スタッフの実家のレモン畑が放置されていて何かに使えないだろうかなど、耕作放棄地の管理をはじめ農業体験につながるようなアイデアも、今後はどんどん募集していきたいです。

就労支援は新たなフェーズへ

—就労支援事業においては、2023年度にはTSUMUGI CAFE 武蔵野でコーヒーの焙煎を本格的に開始、コーヒー豆の販売も始まりました。

高堀:コーヒーの焙煎を始め、どう戦略的に販売していくかを話し合い、「Do」というブランドとして世に送り出すことができました。※2 下記関連リンク参照

「Do」は、「何事も自分たちでやってみる」「アクションを起こしていく」という私たちDoronkoの精神と、英語のDoがもつ能動的で主体的なイメージ、短い発音に感じられる勢い、さらにDoronkoのDoを重ねて決めたブランド名です。

ウェブサイトも完成し、オンラインショップではコーヒー豆、ドリップバッグコーヒー、店舗ではそれに加えてパウンドケーキも販売しています。また、埼玉県にある結婚式場が披露宴で提供するコーヒーに選んでくださったりと、企業との取引も始まりました。※3 下記関連リンク参照

Doのブランド名でコーヒーやパウンドケーキを販売
Doの名のもと、コーヒーとパウンドケーキを販売中

安永:この商品は就労継続支援B型事業所である就労支援つむぎ 武蔵野ルームが運営する「TSUMUGI CAFE 武蔵野」で、障害のある方が創り上げていますが、そういったことをあえて前面に出すのではなく、商品そのものの良さが認められて世に流通し、稼げるようになることを目指したいと思っています。保育園では近隣とのお付き合いでお礼をお届けすることもありますが、その贈り物にDoのギフトセットを使ってもらえればと、社内の購買サイトでも注文できるようにしました。

高堀:東京都の就労継続支援B型事業所の工賃平均額は月額16320円(東京都福祉局「令和4年度 都内指定事業所における賃金・工賃支払実績について」より)と非常に安いのです。その原因としては、きちんとした商品を営業してきちんと売るといった経営視点が抜けているからだと思っています。私たちはそこをきちんとして工賃を引き上げられるような取り組みをしていきたいのです。

—2024年度、就労支援においてはどのような動きがあるのでしょうか?

高堀:現在までにコーヒーの焙煎や提供、スパイスカレーの調理など、「TSUMUGI CAFE 武蔵野」の就労支援利用者の経験とスキルが積み上がってきています。そこで2024年度はそれらを生かして利用者が実地店舗で働く場を創出したいと考え、渋谷駅前に「スナックつむぎ」のオープンを決めました。

安永:就労支援の実践の場であり、お昼はランチ営業をしてスパイスカレーやコーヒーを提供し、利用者の方にはそこで働いていただきます。ちなみに夜はスナックとして営業し、どろんこ会グループスタッフの懇親の場や福利厚生としても使ってもらいたいと考えています。

カフェ自慢のスパイスカレーとパウンドケーキ
スパイスカレーのレシピは安永理事長が考案

—なぜスナックだったのでしょうか?

安永:もともと私も高堀も、いろいろな人と知り合えるスナックは大好きでした。保育園でも活動に取り入れている銭湯、昔ながらの駄菓子屋、そしてスナックというのは地域のコミュニティの一つであり、日本ならではの付き合い方だと思っています。コロナ禍により直接対面でお酒を楽しむ機会も少なくなり、どろんこ会グループには若いスタッフも多いので、対面でリアルに懇親できる場が必要なのではと思っていました。

高堀:2023年にたまたま立ち寄ったスナックが高齢で営業を終えるといった話を聞きました。私たちは昔から日本にあった銭湯、駄菓子屋、スナックを大切な文化として残していきたいと考えていました。今後もスナックは高齢化でどんどんなくなっていくと見ています。そこでリノベーションして引き継ぐことを決心しました。本社にも近く、本部スタッフも、本社に来る園のスタッフも懇親の場として使ってもらい、福利厚生の側面ももたせたいと思っています。

安永:ここではグループ法人の株式会社南魚沼生産組合で作っているお米を活用して、羽根つきおにぎりといった新しいオリジナル商品も販売しようと考えています。南魚沼生産組合の東京でのアンテナショップ的な位置づけにもなります。

確固たる目標をもって事業を進めてきた二人
確固たる思いをもって事業を推し進めてきた安永理事長と高堀代表

南魚沼では持続可能な農業と食育を推進

—農福連携も着々と進めてきた2023年度だったのではないかと思いますが、株式会社南魚沼生産組合、株式会社Doronko Agriでも新たな動きがあるのでしょうか?

高堀:株式会社Doronko Agriにおいては、2024年度内に埼玉県内の農業生産法人を合併買収する予定であり、畑の耕作面積がさらに大きく広がる見込みです。2023年度はまずはトライアルとして8種ほどの野菜を生産しましたが、今後は保育園の給食レシピチームと連携し、どのタイミングでどの野菜が必要かを把握しながら無農薬での生産にこだわって進めていきたいと考えています。

埼玉県日高市の畑の様子
埼玉県日高市で野菜を栽培

株式会社南魚沼生産組合では、ジビエの解体処理施設とクラフトビールの醸造所建設を進め、2024年度にはライスセンターと同じ敷地内で稼働する予定です。

私たちは子どもたちに田植え、稲刈りの体験をしてもらいたいと、長年南魚沼市に通う中で、中山間地の棚田の担い手が激減している状況を目の当たりにし、耕作放棄された田んぼの世話を積極的に引き受けてきました。

三方を山に囲まれた田んぼ
南魚沼市の中山間地にある田んぼ

山の中なので獣害が非常に多く、特にイノシシやシカが田畑を荒らすのを多く見てきました。私も数年前に猟銃免許を取得し、地元の猟友会の方々と駆除に携わっています。共に活動していく中で、猟師の高齢化を目の当たりにし、撃った獲物を大切に有効活用し、流通させる仕組みが必要だと感じました。そのために南魚沼市と協議しながら施設づくりを進めてきました。施設内をガラス張りにし、子どもたちが解体処理工程を見学できるようにすることで、食育も兼ねられるようにしました。

南魚沼で猟をする高堀代表
仕留めたイノシシとともに、左から高堀代表、師匠と仰ぐ猟友会の方、マーケティング本部部長の諸我さん

安永:クラフトビールの醸造所にはビアバーも併設するので、ジビエ肉で作ったソーセージと共に楽しむことができます。このビアバーからは南魚沼の山々とそこに並ぶスキー場を見渡しながら味わうことができるので、とても気持ちよい場所になると思います。もちろん渋谷のスナックでも南魚沼で作ったビールを出します。

質の高い保育・教育のフロントランナーとして

—最後に、どろんこ会グループは2023年に25周年を迎え、2024年は新たな25年の始まりとなります。どのような年にしていきたいとお考えでしょうか?

安永:日本の保育現場は、地域にもよりますが保育・教育の質の格差がまだまだあります。

保育所保育指針がずいぶん前に変わり、また保育所保育指針と同じ位置づけにあたる学習指導要領も改訂されているというのに、多くの保育現場は20年前と何も変わっていないのです。

どろんこ会グループが首都圏だけでなく九州、沖縄、東北など各エリアに園を開園している理由は、良い意味で保育・教育におけるサービスの質の競争を起こすことで、地域全体で時代に合うものに変えていきたいからです。私たちは各地で子どもたちに生活力、思考力を育む、質の高い保育・教育を、あらためてフロントランナーとして取り組んでいかなければと思っています。

もう一つ、2024年度に取り組みたいと考えているのは、マニュアルのペーパーレス化です。約2300人のスタッフ全員に貸与しているスマートフォンを生かして、気になったときにすぐに調べられるような環境を整備したいと考えています。

マニュアルは毎年見直しを行っていますが、ペーパーレス化をきっかけに、本当に必要なものに絞って磨きをかけ、やらなければならないことを整理してなるべく減らして、現場の保育・教育の質の向上につなげていくことを達成したいです。

—まさに「選択と集中」ですね。

安永:そのとおりです。時代がこれだけ変化している中で教育、働き方、効率化も含め、全てを見直しながら走り続けたいですね。しかしそれは私だけが考えていてはいけないと思っています。スタッフ一人ひとりが考えることをしなくなったらよい教育ができなくなってしまうからです。20年前はやらなければならなかったことは、今本当にやる必要があるのか、不必要なら削いでいくことを、スタッフ一人ひとりが自分の頭で考えられる集団でなければならないと思っています。

選択と集中を表明した安永理事長
選択と集中の重要性を語った安永理事長

1998年に創業し、25周年を迎えた2023年度。26年目に入り、どろんこ会グループはこれまでに積み上げてきたものを磨き上げながらも不要なものは削ぎ、常に自らを更新しながらさらなる進化を遂げます。ご期待ください。

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