不適切保育や虐待を防ぐため どろんこ会グループの人権チェック

2024.07.18

#保育#発達支援

子ども発達支援センターつむぎ 東大和 東大和どろんこ保育園

「不適切保育」のニュースが後を絶ちません。どろんこ会グループでは、例えば「嫌がる子に無理やり食べさせる」、「強引に違う場所に連れて行く」、「背後から抱き上げる」、「おばけが来るよ」と脅したり、「ほかの子はみんなできているのに」と比較するなど、14項目の行為を身体的・心理的虐待と位置づけ、万が一園内で目撃したときの対応を定めています。

不適切保育や虐待が起こってしまうのは子どもの人権を尊重できていないからにほかなりません。どろんこ会グループでは、全スタッフが子どもの人権を尊重するよう、グループ内で定めた「児童・保護者の人権に関するチェックリスト」に基づき、一人ひとりが自身の保育を振り返り、確認する機会を年に2回設けています。

2024年4月に開園したばかりの東大和どろんこ保育園と子ども発達支援センターつむぎ 東大和(東京都東大和市)では、人権チェックを実施するにあたり、統括施設長の宮澤さんからスタッフ全員に向けて、あらためて子どもの人権について話す機会をつくりました。

園会議の様子
東大和どろんこ保育園と子ども発達支援センターつむぎ 東大和の園会議の様子

子どもの権利条約をしっかり頭に入れる

宮澤さんは人権チェックを各自で行う前に、「子どもの権利条約を知っておいてほしい」と解説を始めました。

子どもの権利条約は、子どもは権利をもつ主体であるという考え方に基づき、子どもも大人と同じ人間であり、一人の人間として人権をもっているということを明確に定めており、以下の4つの原則があります。

  • 差別の禁止(差別がないこと)
  • 子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
  • 生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
  • 子どもの意見の尊重(子どもが意味のある参加ができること)

(引用元:ユニセフ 子どもの権利条約の4つの原則

子どもの権利条約を分かりやすく説明した絵本
子どもの権利条約を学べる本として園に置いてある

宮澤さんはこれらをスタッフに分かりやすく説明したうえで、保育者として知っておかなければならない子どもがもつ権利についても触れました。

「子どもには愛される権利が大前提にあり、例えば、赤ちゃんが何かを指さしたり、声を出して訴えている時、大人に向き合ってもらう権利があります。0歳から人権をもっているのです。子どもがもつ思いや願いを権利として認め、それを否定したり無視することは許されません。保育者は子どもが何を伝えたいのか、常にアンテナを張っている必要があります。保育者の丁寧な応答から子どもが主体性を身につけ、さらには人間っていいな、温かいなと思えるような土台をつくることは私たちの責務なのです。

そして、子どもは自分らしく成長する権利ももっています。皆と同じような行動をしてほしい、言うことを聞いてほしい、というのは子どもの権利を踏みにじっています。日本では何が子どもにとってよいかを大人が決めてしまう大人主導型の思考がまだ根強くあるからこそ、私たちは大人の都合で子どもたちのことを決めていないかを常に振り返る必要があります」と真剣に語りかけました。

乳児期からの丁寧な関わりが大事
乳児期からの丁寧な関わりが大切

子どもをかけがえのない存在として尊重する

どろんこ会グループの人権チェックリストは全90項目あり、子どもの育つ環境や、子どもへの言葉がけ、保育内容など多岐にわたります。

例えば保育環境においては「手洗い場、トイレは、保育中も時折清掃し、不快なにおいがないようにしている」かどうかのチェック項目がありますが、宮澤さんは「私たち大人もくさい、汚い場所では過ごしたくないですよね」とスタッフに問いかけます。

言葉がけにおいては「早くしなさいとせかす言葉や、だめ、いけませんなど制止する言葉を不必要に用いないようにしている」かどうかを確認する項目があります。親であればついつい言ってしまいそうな言葉ですが、大人も自分に置き換えてみれば、他人に言われたら不快な思いをする言葉です。

宮澤施設長が真剣に話します
全スタッフに向け真剣に語りかけた宮澤施設長(右)

宮澤さんは「私は学生の時に前髪が長いと言われ切られたことがあり、ルールだから守らなければならないと思って過ごしてきました。でも、どろんこ会に入職してそれは違うということが分かりました。ルールは人から強制されるものではなく、自分たちで考えるものです。例えば、廊下は走らないなど禁止事項を書いている園もあるかもしれませんが、子ども自身が行動してみてどうしたらよいのかを考えることが大事なのです。走ったら危ない、だから走らないようにしようと考えてほしいのです。大人が決めて、大人が守るように指示を出すものではないのです。この先、子どもたちには自分の足で歩んでいってほしいという願いをこめ、保育者は子どもたちに一人の人間として接し、かけがえのない存在として尊重し、子どもの主体性を認めるために、この人権チェックを行ってください」と締めくくりました。

子どもの最善の利益のために

東大和どろんこ保育園と子ども発達支援センターつむぎ 東大和には2024年4月に入職したキャリア採用のスタッフも多くいます。今回の説明を受け、次のような感想が聞かれました。

・前職の児童養護施設でも人権チェックはありましたが、どろんこ会グループのチェックリストはより細かく、子どもとの関わりだけではないところにまで及んでいるので、細部にわたり日々の保育で意識していかなければならないことに気づきました。

・前職でも子どもの権利条約については大事にしていきましょうと言われていたので意識はしていたつもりでした。しかし宮澤さんの話を聞いて、子どものためと思っていた言葉がけが、私にとって都合のよい言葉がけになっていなかっただろうか、子どもにとってプラスの言い方になっていただろうかと振り返る機会になりました。人権について分かっていたつもりになっていたと感じました。知識として知っているからこそ、あらためて「子どものため」がエゴになっていないかを問い直したいと思います。

スタッフ一人ひとりが子どもの人権を守る意識をしっかりもってこそ、不適切保育や虐待を防ぐことができます。どろんこ会グループでは引き続き子どもの最善の利益のための取り組みを続けてまいります。

関連リンク

ユニセフ 子どもの権利条約

施設情報

東大和どろんこ保育園

子ども発達支援センターつむぎ 東大和

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