「保育博2024」にどろんこ会の安永理事長が登壇 医療的ケア児保育のリアルを語る

2024.12.19

#メディア・講演

全施設

2024年11月22日、保育業界に特化した商談見本市「保育博」のマネジメントセミナーに、社会福祉法人どろんこ会の安永理事長が登壇いたしました。

今回のテーマは「皆に混ざって食う寝る遊ぶ。園長に聞く『医ケア児保育』のリアル」。

保育博マネジメントセミナーのプログラム
保育業界の著名人による、保育園経営者を対象としたセミナー

医療的ケア児(以下、医ケア児)とは、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアが日常的に必要な児童を指します。

2021年には、医ケア児の心身の成長を促し、安心して子どもを生み育てられる社会づくりを目指して「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」が成立しました。医療技術の進歩により在宅で生活する医ケア児も増え、2022年には推計で2万人※1を超えるなど、保育園での医ケア児受け入れのニーズも高まり続けています。一方で、施設環境や運営面で不安を感じる事業者も少なくありません。

そこで、今回の講演ではそうした事業者の方に参考にしていただけるように、第1部では安永理事長より医ケア児受け入れの考え方と実現方法について、第2部では実践事例として、実際に医ケア児が在籍する見附どろんこ保育園(新潟県見附市)の若杉施設長より、受け入れ時の不安をどのように解消していったのかをそれぞれお話ししました。

安永理事長の講演の様子。満席のため、立ち見の方も多くいらしゃいました
当日は満席となり、想定よりも多くの方にご聴講いただきました

医ケア児保育はなぜ必要か どう実現するか

第1部では、医ケア児が保育園に通う必要性や、受け入れを実現するための考え方について、社会課題に触れながら話しました。

どろんこ会グループでは、障害の有無で生活の場や活動を分けないインクルーシブ保育を行っています。これは、乳幼児期から分離されることで社会参画の機会を奪われてしまう問題が背景にあるためです。医ケア児も同様に、他の子どもたちと生活を共にし、社会と分離されずに幸せを感じながら心身共に健やかに生きていくためには、他の子どもたちと混ざりながら「食う寝る遊ぶ」を共にすることが必要であると安永理事長は説明しました。

タイトル「医ケア児保育はなぜ必要か どう実現するか」をスクリーンに写しながら話す安永理事長
医ケア児保育の必要性について語る安永理事長

また、どろんこ会グループで受け入れている医ケア児の事例をいくつか紹介しました。医ケア児は必要とするケア内容が一人ひとり異なり、すべてのケースで特別な施設改修や専任の看護師が必要なわけではありません。一定の研修を受けた保育士や介護士が「認定特定行為業務従事者」として医師の指示のもと一部の医療的ケアを行うことが可能です※2。「医ケア児」と一括りにして受け入れを諦めるのではなく、個々のケースに応じた柔軟な姿勢が必要であることを訴えました。

公園で遊ぶ医ケア児の様子
酸素吸入が必要な医ケア児も、他の子どもと一緒に戸外活動を行います

“皆に混ざって食う寝る遊ぶ” どろんこの医療的ケア児の保育

2024年4月、新潟県見附市に開所した見附どろんこ保育園は、児童発達支援事業所と地域子育て支援センターを併設しており、両施設の子どもとスタッフ、医ケア児が一つ屋根の下で家族のように生活を共にしています。

見附どろんこ保育園/発達支援つむぎ 見附ルームの園舎
新潟県の広大な土地にある保育園。敷地内に田んぼや畑もあります

見附どろんこ保育園の若杉施設長は、医ケア児受け入れに際してスタッフが抱えていた不安について触れました。保育中に想定される問題を一つずつ洗い出し、保護者や医療機関と必要なケアを確認し、見通しを立てました。その過程で、抱えていた不安が医ケア児特有のものではなく、全ての子どもの受け入れ時に共通するものであることに気付いたと言います。

その他にも、医ケア児受け入れの具体的な実践内容を紹介。受け入れ前の保護者・スタッフへの説明方法や、日々の情報共有の場をどのように持つかなどの運用面、さらには他児が医ケア児にネガティブな言葉をかけた場合の対応方法など、講演内容は多岐にわたりました。

講演中の見附どろんこ保育園の若杉施設長
医ケア児受け入れの実状を語る見附どろんこ保育園の若杉施設長(右)

最後に、医療的ケア児の保護者からのメッセージを来場者に配布しました。「一人でも多くの人に医ケア児受け入れの現状と当事者の思いを知ってほしい、医ケア児にも光が当たってほしい」という切実な願いが込められていました。

安永理事長は、「今回の講演をきっかけに、各保育事業者ができることを実践し、それによって保育の質が向上していくことを願っています」と締めくくり、講演は終了しました。

インクルーシブ保育・医ケア児受け入れに関する視察やご相談について

セミナー終了後は、多くの保育事業者の方から「勉強になりました」というお声や、インクルーシブ保育や医ケア児受け入れのご相談、施設の視察希望をいただきました。そうしたご希望にお応えできるよう、実際に運営施設をご覧いただきながらインクルーシブ保育実践のノウハウをお伝えする現地視察ツアーを企画しています。ツアーをはじめインクルーシブ保育に関する視察・お問い合わせにつきましては、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

インクルーシブ保育に関する視察・お問い合わせ

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注釈

※1 医療的ケア児について(厚生労働省)

※2 『保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン 改訂版』令和6年3月 保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究

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