【乳幼児期に育む「6つの力」を考える】商店街ツアー編
2019.09.12
どろんこ会グループには「6つの力」と呼んでいるものがあり、それぞれの力を育むための基本活動が26あります。どろんこ会グループ独自の表現もありますが、「6つの力」も「基本活動」も、2018年4月1日から施行された新「保育所保育指針」に明示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」に基づいているもの。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(厚生労働省 保育所保育指針より)
ア 健康な心と体 イ 自立心 ウ 協同性 エ 道徳性・規範意識の芽生え オ 社会生活との関わり カ 思考力の芽生え キ 自然との関わり・生命尊重 ク 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 ケ 言葉による伝え合い コ 豊かな感性と表現
「10の姿」は、幼児期の終わりに急に育つものではありません。乳児期からの日々の生活や遊びが、「10の姿」につながっていくような保育が重要だとされています。また、「10の姿」がすべて育っていなければならないということではありません。子どもは一人一人違い、多様です。大人だって「10の姿」が完璧な人はいないはずです。「10の姿」は、「この子はこんな姿が育っているんですよ」と、子どもの「良いところ」「成長した姿」を伝えていくものなのです。
そんな「10の姿」を日々の生活や遊びを通して育んでいくのが、「6つの力」と26の「基本活動」です。今回は、6つの力の「すべての人との関わりから、判断・行動を身につける」の中の基本活動「商店街ツアー」の取り組みについてご紹介します。
「6つの力:すべての人との関わりから、判断・行動を身につける」の詳細はこちら
「商店街ツアー」とは
「商店街ツアー」と聞くと「お買い物体験」といったイメージがあるかもしれませんが、どろんこ会グループでは「地域交流・様々な仕事を目にする・地域の大人と目を見て話す」を目的にしています。でも、どろんこ会グループの保育園は、自然豊かな郊外型、駅ビル型、事業所内・院内など様々な形態があり、幼児クラスが無い園、近くにあまり商店がない園もあります。施設形態や立地によって、「できる・できない」差がある中で、各園はこの活動をどう捉え、どう取り組んでいるのでしょうか。今回は、0歳児から2歳児がメインとなっている筑波記念病院の院内保育所アイビー保育園(茨城県つくば市)の取り組みをお伝えします。
アイビー保育園の取り組み
アイビー保育園がよく訪問するのは、保育園がある筑波記念病院やケアセンター(デイサービス)、近隣の商店、パン屋さん、焼き芋屋さん(移動販売)、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ホームセンター、牛舎など。都心のように、多種多様な商店や企業が数多くあるエリアではありません。そのようなエリアで訪問先を決める時に大事にしていることを、アイビー保育園の金田園長とリーダーの長瀬さんに聞いてみました。
「『商店街ツアー』というと、様々なお店で買い物をする体験と考えがちですが、私たちは保育園の近隣にあるいろいろな施設にお邪魔して、そこで様々な方たちと触れ合う事をメインに考えています。例えば、筑波記念病院に併設されているケアセンターには、度々お邪魔させていただいています。施設内にあるお庭では、散歩で行った時にいつも遊ばせていただいて、おじいちゃんおばあちゃんとお話することも。みなさん、子どもたちが来るのをとても楽しみにしていて、いつもにこやかに出迎えてくださいます。毎日園に給食を配達してくださる病院職員の方の姿が見えると、みんな門のところに駆け寄って、『給食きたよ』と他の子どもたちに知らせ、配達の方に『今日の給食な~に?』などと聞いたりコミュニケーションをとっています」と金田園長。
リーダーの長瀬さんは、商店街ツアーを通して生まれた地域の方とのエピソードを教えてくれました。
「近くの牛舎のおじさんはいつも牛を見せてくれたり、七夕の笹を譲ってくださったり、子どもたちはとても大好きです。ぶどう園やブルーベリー園では、実際に果実が実っているところを見せていただいています。試食をご用意していただくことも。畑の出荷の様子を見学していたら、農家の方に白菜をいただいたこともありました。近くの建設会社には『クレーン車のおじさん』と呼んでいる方がいて、クレーン車を動かしていつも子どもたちに見せてくださいます。春には、会社の敷地内にある桜のお花見に行かせていただいています。」
アイビー保育園にとって「商店街ツアー」とは
「幼児であれば『お金の流れや流通を知る』という目的もありますが、現在、0歳児から2歳児がメインのアイビー保育園ではあまり考えず、『商店街ツアー』は、まずはいろんな人と出会い、笑顔で挨拶を交わし、親しみを持って会話をする機会だと考えています」と金田園長。
リーダーの長瀬さんは「子どもたちにとっては訪問先で見たこと、経験したことが、その後のごっこ遊びにつながっていきます。また、地域の方との交流を大事にすることで、散歩をしていても暖かく見守っていただけます。散歩道にへびが出たときは、すぐに近所のおばさんが捕まえてくれたこともありました。地域の方と顔見知りになると、子どもたちが大きな声でご挨拶できるようにもなっていくんです」と語ってくれました。
「商店街ツアー」を通して育むもの
アイビー保育園のエピソードから、「商店街ツアー」は数多くの商店や企業を訪問すること、買い物体験をすることだけが目的なのではないということが見えてきました。「商店街ツアー」は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の中では、「オ 社会生活との関わり」にあたります。
アイビー保育園のように、乳児期のころから、まずは挨拶を通して地域の身近な人たちと触れ合う経験を積み重ねること。その経験が、子どもたちが地域社会に出ていく時の安心感を育んでいきます。地域社会に出て、見聞きした仕事や人々とのやり取りは、「ごっこ遊び」のように遊びの中にも取り入れられるようになります。
また、系列園である郡山どろんこ保育園(福島県郡山市)の真島園長は、幼児にとっての商店街ツアーについて、「子どもは地域で育つもの。地域に暮らす人が創る保育園もコミュニティの一つ。自分と他者、地域、家族との共生の体験など、地域に関心を持つきっかけが商店街ツアーです。私たちは親や多様な大人たちとの暮らしの中で、異年齢の子ども集団をつくり、そこで大人になっていきました。人とのつながりが希薄になっていく時代に、その体験の場だとも思っています」と話します。
地域とのつながりや体験から芽生える関心、多様な人との関わり合いが「自分で調べ、考え、行動する思考・力」へとつながっていく。それが「商店街ツアー」で育みたい力の一つです。
今回はアイビー保育園の「商店街ツアー」の取り組みを通して、「すべての人との関わりから、判断・行動を身につける」を考えてみました。ただ預かるだけの保育ではなく、「これからの社会を創る子どもが経験すべきこと」「日々の生活や遊びを通して学びに向かう力を育むこと」を考え、その機会をつくっている園・職員のエピソード。今後も様々な園・職員の【乳幼児期に育む6つの力を考える】シリーズをお伝えしていきたいと思います。
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